ふたりぼっちの孤城
「何かあるんですか?」
鏡越しに凄みのある笑顔を向けてくる。辞めて欲しい。
(圧がすごいのよ、圧が・・・!!)
「か、借りてる本がどうしても読み終わりそうにないのよね」
「じゃあダメです」
「えっ」
「本なら延長してもらえばいいでしょう?」
「次に予約している人がいるから無理よ」
「だったら買えば済むんじゃないですか」
「お金の無駄遣いはしたくないの」
「だからってお嬢様の睡眠時間を削る理由にはなりません」
「いくらなんでも過保護すぎよ」
「貴方様にはそれぐらいが丁度いいんです。ちゃんと私に保護されていてください」
「わたしだってあと2年もすれば成人するのよ!」
「成人しても私にとって大切なお嬢様ということには変わりませんよ。今と変わらず守り抜きます」
この執事は「大切」だの「守る」だの一丁前に歯が浮くようなセリフをさらりと口にする。
それを言われてしまうとどうにも反論が出来なくて、結果的に黙り込んでしまう。
そのことを分かった上で山吹は発言するからタチが悪い。
だってわたしが山吹に守られているって言うのは本当だもの。
でも22時半に強制的に消灯されるのは早すぎると思うの。
わたしは華の女子高生で16歳。
平均的に考えて中学生だってまだ起きているわ。
いくら山吹がわたしに甘いからと言ってもここだけはどうしても折れてくれないのよね。ケチ。