ふたりぼっちの孤城
「破滅って・・・大袈裟ね」
「貴方様の為を思って言っているのです」


理沙の言う通りわたしは山吹を使いこなせていない。

山吹の本来の能力を全て活かせているかと言われれば自信がない。

それがどうした。

山吹はわたしの道具じゃない。

山吹はわたしにとって唯一の家族だ。


「・・・そうかもしれないわね。でも、わたしは山吹を手放さないわ」


藤の言葉で冷め、麻生の言葉に動揺し、柊の言葉で苦しめられたわたしが出した答えがこれだ。

他の人からわたしの知らない山吹が語られる?そんなの当たり前のことだ。

わたしだって山吹といるときと他の人といるときでは態度が全然違う。

山吹も同じだっただけ。

何らおかしなことは無い。

だからわたしは今までの山吹を信じる。

根拠なんてない。

でも一緒に過ごした時間が間違っていないと背中を押してくれる。


「気に入らないのなら勘当してくれて構わないわ。そうお父様に伝えてちょうだい」


山吹の居場所はわたしが守る。


「話は終わりよ。下がりなさい」
「・・・畏まりました」


理沙が出ていき1人になったところでようやく息が出来た気がした。

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