ふたりぼっちの孤城


「っ1人にして申し訳ありませんでした」
「怖かった・・・!!怖かったわ!!!」


ずっと我慢していた涙が一気に流れ出した。

山吹が悪くないことは知っている。

でもそれを伝える余裕なんて残っていなかった。

「椿お嬢様。もう、大丈夫です。大丈夫ですよ・・・。私が、います。ずっとお傍にいます」


山吹はそう言いながら、わたしを安心させるように抱きしめ頭を撫でてくれる。

山吹。山吹だ。

優しい匂いがする。

わたしの山吹だ。

身体の緊張が解れてきて、眠気がわたしを襲う。

抵抗なんて出来る訳もなく、山吹に身体を預けてそのまま眠ってしまった。

だから眠りにつく直前、山吹がわたしに何て言ったかなんて知らない。


「・・・貴方を、愛しています」


その言葉はまだ届かない。
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