ふたりぼっちの孤城
「・・・失礼、します」


本当は立ち去りたくなんてなかった。

今すぐにでも彼女の傍に駆け寄り、話を聞きたかった。

でも彼女の命令に逆らうことはできなかった。

これ以上彼女に拒絶されたくなかったから。

そんな私の弱さを、彼女は誰よりも理解していた。






その日以来、彼女の世話は主に私の実の姉である理沙に任せている。

だが姉も彼女に付きっきりなれないので、彼女の食事等は私が作り、姉が運ぶようにしている。

彼女の義妹から専属にならないかとオファーがあったが、即断った。

彼女以外に仕えるなど有り得ない。

私は彼女に忠誠を誓ったのだ。

たとえ彼女に嫌われようとも、彼女のために生きたかった。

それでもこんな日常が続けば疲れは溜まっていく。

今までは彼女との時間という癒しがあった。

それを失ってしまえば、私は酷く脆い。

彼女が社交パーティーに出る日、私は彼女には会えないので、日が暮れる様子をぼんやりと見ながら私は途方に暮れていた。

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