ふたりぼっちの孤城
そして今女性が膝の上に乗り、私の首筋を撫でている。

私もそれに習い女性の頬に触れ顔を近づけた。

だが何も感じなかった。

全然惹かれない。

むしろ鳥肌が立った。

なんだか無性に彼女に会いたくなってきた。

また「山吹」と呼んで甘えて欲しい。


「やっぱり生理的に無理ですね。帰ります」
「まっ、待ってよ!ねぇ!」
「お金は私が払っておくのでお気になさらず」
「さっきまでノリノリだったでしょ?!」
「さようなら」
「ねぇってば!」


そんな考えを振り払うように、膝の上の女性を退けるとお金を払って早足で退出した。

呼び止める声が聞こえたが振り向かなかった。

それよりも彼女の笑顔が脳裏をチラついて落ち着かない。

無理やり思考を切りかえ、さっきの女性のことを思い返した。

私がそういう気分になっていればそのまま深い仲になってたが、確実に付き合えはしなかった。

もし付き合っても浮気されるのがオチだ。

今回はたまたま好みの女性じゃなかった。

だから切り替えようと思う。

それ以来何人もの女性に声をかけたし、かけられた。

幸い顔が良かったので全て上手くいった。

清楚系、可愛い系、癒し系、サバサバ系、地雷系、ロリ系・・・。

色々な人とデートしたが、私は誰とも付き合いたいとは思わなかった。
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