ふたりぼっちの孤城

せいぜい手を繋いだり腕を組んだぐらいだ。

たったそれだけでどんどん嫌悪感が募っていく。

そしていつしか汚らしいと思うようになっていった。

彼女には一切抱くことのなかった感情だ。

いつの間にか私は彼女以外を受け入れられなくなっていた。

その事実に鈍器で殴られたかのような衝撃を受ける。

今までずっと私は彼女を敬愛していると思っていた。

でも、もしかしたら、私は彼女にそれ以上のものを抱いていたのだろうか。


(いえ、有り得ません。だって彼女は私にとって・・・─────)


何よりも大切なお嬢様、と言いかけて言葉に詰まった。

私は何故、脳内では彼女を「彼女」と呼ぶのか。

普通に「お嬢様」と呼べばいいじゃないか。

なのに、何故そう呼ばないのだろう。

今まで無意識にそうしてきた。

理由なんて考えたこともなかった。

だが改めて向き合ってみると不自然だ。

分からない。

自分が分からない。

分からなくなっていく。

底なし沼にズブズブと沈んでいくようだ。

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