変化カラスとサキ
 サキが気づくと、腕の中にいたカラスが光りに包まれ、次第に人の姿に変わっていくところだった。

「…っ…カラスっ…おめ、大丈夫か…!?あんなに…」

 目の前でカラスが変わっていくのを初めて見た。
 しかし、さっきまであまりにも衰弱していたカラス。夕刻見たときよりも更に着物は破れ、あちこち傷だらけだった。

「…見せたく、なかったのになぁ…お前はカラスが嫌いだって言った…。だから人の姿を模してたのに…。おまけに、さらに格好悪いところ、見せちまって…」

 サキは泣きたいのをこらえて男に縋り付いた。

「っ…格好悪いもなんもあるかっ…!!どれだけ心配したと思ってる…!?嫌いだったらこんなとこっ…!!」

 サキは男の服を掴んだまま、下を向いた。

「おめが死んだら、どうしよう、ってっ…!…雀の嫁さんなんて、もらうな…!おめみたいなカラスには、おらがなってやるくらいがいい…。ごめんな…カラス…」

「サキ…」

 サキは初めて名を呼ばれてハッと顔を上げた。

「悪かった…。してえなあ…サキを…嫁子に…」

 男は呟くようにそう言うと、再び光りに包まれカラスの姿になり、サキの横で気を失ってしまった。

「…っ…帰ろ…!待ってろな…」

 言ったものの足はまだふらつき、空腹も重なってか、すぐに動けなくなってしまった。


 サキはまどろみの中で夢を見た。
 自分もカラスのように空を飛ぶ夢。

 必死に飛ぶ自分の隣に、小さなカラスが寄り添うようにいた。
 夕陽に照らされた、あの光る玉のような目で、自分をじっと見守ってくれている。

 するとサキはうまく風に乗り、小さなカラスとどこまでも、夕陽に受けて飛んでいった。
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