変化カラスとサキ
　早朝、隣村の村人が、森の入口から少し入った場所にいたサキと小さなカラスを見つけた。

　サキは抱きしめたカラスと共に、眠ったまま祖父の家に運ばれた。


　サキが目を覚ますと祖父は食事を作っていた。

　祖父は顔を見て穏やかに笑う。

「サキ、具合悪くないか？飯だ…腹減ったろ。たらふく食って、今日は約束通り寝てろな？」

「ごめんなさい、じいちゃん…」

　祖父は詳しいことは何も聞かず、サキの具合を聞き、食事を用意すると畑へ出掛けて行った。

　サキは用意してもらった食事をすると、布に包まれて寝ているカラスを撫で、そのうちまた寝てしまった。


　祖父が畑から帰るとサキは寝ており、カラスは心配なのかサキを見つめていた。
　カラスは祖父が帰ったのを見届けると、祖父の目の前で人の姿をとった。

「カラス…サキがおめぇのためにだったとは…」

　人の姿になったカラスを見て、祖父はそれほど驚きもせずそう言った。

「じいさん、驚かないのか…？？」

　祖父は男のために野菜を煮てやりながら、その言葉に返した。

「おめぇが人間になることか？…驚かねぇよ。…サキもそうだったからな…」

「え！！？」

　男もさすがに驚いた。

「言うんじゃねぇ、サキには…。約束出来るな？」

「ああ…！」

　男の返事にゆっくり頷いてから、祖父は男に打ち明けた。

「俺はもともと、女房も子供も死んじまって一人だったんだ。孫もいねぇ。昔、山へ行ったらな、赤ん坊らしい子ガラスが落ちてたんだ」

　祖父はサキが目覚めていないのを確認すると続けた。

「…そいつが見る間にな、人間に変わったのさ、一つくらいの人間の子供に。…それがサキだった」

　祖父は少し下を向いた。

「サキはなんも覚えてねぇ…俺はサキを人間として育てている。サキが知るまでは言わずにな。サキに光る玉をやったのもおめぇだな？…おめぇがカラスに戻って、そのうちサキを娶るつもりなら、このまま追い出すだけだ」

「…。」
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