聖女三姉妹 ~本物は一人、偽物二人は出て行け? じゃあ三人で出て行きますね~
⑤
声をかけてくれた三人は、昔からの幼馴染だという。
リーダーの剣士リュウ、盾役のドドロン、魔法使いのルードス。
そこに回復役の僧侶が加わっていたのだけど、数日前に体調を崩してから、冒険者を辞めてしまったのだという。
事情を把握すると、祈りの力で傷を癒すことに出来るボクは、欠員を補うにはうってつけだった。
「ほいっと!」
「凄いな、サーシャちゃん。剣術も得意なんだね」
「えへへ~ 小さい頃から鍛えられてますから!」
「なるほど、頼りになるよ」
初めての魔物との戦闘は、恐怖するものだと聞いていた。
戦い方を教えてくれた騎士さんたちも、初めては身が竦んで上手く動けなかったらしい。
だけどボクの場合はそんなことなく、訓練通りに身体が動いてくれた。
聞いていたよりも怖くない。
お兄さんたちが気をつかって弱い魔物を選んでくれたから、相手の動きもよく見える。
実はちょっぴり不安だったけど、これなら大丈夫そうで安心した。
「怪我をしたら言ってくださいね! ボクが治しますから!」
「頼もしいですね」
「うん。冒険者になったばかりとは思えないな」
頼られるのも気分が良い。
やっぱりボクには、冒険者が向いていたのだと思った。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「たっだいまー!」
「お帰りなさい」
「ちゃんと帰って来たね」
「もちろんだよ!」
初めての依頼を終えた日は、寝るまで気持ちが高ぶっていた。
身体を動かす楽しさと、これまでの訓練の成果が発揮される喜び。
何より報酬を受け取ると、自分の頑張りが形になったと実感できる。
「あのねあのね! みんな良い人ばっかりだったよ!」
「そう。なら良かったわ」
「サーシャちゃんは素直過ぎるから……騙されないようにね」
「確かにそうね。変な人について行っちゃダメよ?」
「わかってるよぉ」
受付のお姉さんと同じことをアイラお姉ちゃんに言われた。
変な人……と言われて思い浮かんだのは、一人でホールの隅に佇む隻腕のおじさんだった。
お兄さんたちは、あの人のことを変わり者だって言っていた。
見た目は確かにそんな感じがして……でも、本当にそうなのかな。
「よーし! 考えるのは面倒くさいし、明日直接聞いてみようかな!」
それがボクらしい。
たぶん大丈夫だとも思うから、自分の直感を信じよう。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
翌日。
集合時間よりも早く、ボクは冒険者ギルドに足を運んだ。
「いるかな~」
建物に入って目を向ける。
すると、あの人は昨日と同じ場所で座ってる彼を見つけた。
「いた!」
やっぱり怖い人には見えない。
ボクは彼に近づき、思い切って声をかけてみる。
「ねぇおじさん、何をしているの?」
「……」
返事がない。
聞こえていると思うけど、明らかに無視されている。
「おーい! おじさん聞こえている?」
「……オレはおじさんじゃない」
「あっ、やっぱり聞こえてたんだ。無視するなんて酷いなぁ~」
ボクはおじさんの前に座る。
「ねぇねぇ! ボクはサーシャって言うんだ! おじさんの名前は?」
「……」
「また無視してる……あっ、もしかしておじさんだから耳が遠いとか?」
「そこまで老化してないわ! あっ……」
ボクは予想通りに返してくれて、ニコニコ笑いながらおじさんを見つめる。
そんな僕を見て、おじさんは大きなため息をつく。
「はぁ……何なんだよお前」
「ボクはサーシャだよ」
「そうじゃなくて、何でオレに話しかけてるんだ? 昨日パーティーはどうした?」
「まだ集合時間じゃないんだ。おじさんと話したくて、ちょっと早く来たんだよ」
「オレと? お前……変な奴だな」
「お兄さんたちは、おじさんが変な人だって言ってたよ」
ボクがそう言うと、おじさんはピクリと反応する。
「だったら尚更話しかけてくるな」
「何で?」
「何でって、変な奴と話してると余計な心配かけるぞ」
「大丈夫だよ。だっておじさんは変な人でも、悪い人でもないでしょ?」
話しかけてみてわかった。
やっぱりボクが思った通りだ。
「お前……あんまり素直過ぎると、いずれ痛い目を見るぞ」
「大丈夫! ボクはこう見えて強いんだ」
「そうかい」
「おじさんも冒険者だよね? 依頼は受けないの?」
「受けてるぞ。適当にな」
「へぇ~ ねぇねぇ、冒険者って楽しい?」
「普通だ。オレは別に、報酬さえもらえれば何でもいいからな」
話の途中で、おじさんの視線が動く。
出入り口の付近に目を向けると、お兄さんたちがいた。
気付けば約束の時間に近づいている。
「もう行かなきゃ」
席をたち、お兄さんたちのほうへ向かう。
すると、後ろからおじさんが言う。
「気を付けろよ」
「うん! おじさんも、戻ったら名前教えてね!」
ああ、やっぱりおじさんは良い人だ。
見た目はちょっぴり怖いけど、言葉とか声に優しさが感じられる。
それにどうしてだろう。
おじさんと話している時は、変に緊張もしない。
何だかお姉ちゃんたちと話しているような感じがする。
戻ったらまた話してみたいな。
リーダーの剣士リュウ、盾役のドドロン、魔法使いのルードス。
そこに回復役の僧侶が加わっていたのだけど、数日前に体調を崩してから、冒険者を辞めてしまったのだという。
事情を把握すると、祈りの力で傷を癒すことに出来るボクは、欠員を補うにはうってつけだった。
「ほいっと!」
「凄いな、サーシャちゃん。剣術も得意なんだね」
「えへへ~ 小さい頃から鍛えられてますから!」
「なるほど、頼りになるよ」
初めての魔物との戦闘は、恐怖するものだと聞いていた。
戦い方を教えてくれた騎士さんたちも、初めては身が竦んで上手く動けなかったらしい。
だけどボクの場合はそんなことなく、訓練通りに身体が動いてくれた。
聞いていたよりも怖くない。
お兄さんたちが気をつかって弱い魔物を選んでくれたから、相手の動きもよく見える。
実はちょっぴり不安だったけど、これなら大丈夫そうで安心した。
「怪我をしたら言ってくださいね! ボクが治しますから!」
「頼もしいですね」
「うん。冒険者になったばかりとは思えないな」
頼られるのも気分が良い。
やっぱりボクには、冒険者が向いていたのだと思った。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「たっだいまー!」
「お帰りなさい」
「ちゃんと帰って来たね」
「もちろんだよ!」
初めての依頼を終えた日は、寝るまで気持ちが高ぶっていた。
身体を動かす楽しさと、これまでの訓練の成果が発揮される喜び。
何より報酬を受け取ると、自分の頑張りが形になったと実感できる。
「あのねあのね! みんな良い人ばっかりだったよ!」
「そう。なら良かったわ」
「サーシャちゃんは素直過ぎるから……騙されないようにね」
「確かにそうね。変な人について行っちゃダメよ?」
「わかってるよぉ」
受付のお姉さんと同じことをアイラお姉ちゃんに言われた。
変な人……と言われて思い浮かんだのは、一人でホールの隅に佇む隻腕のおじさんだった。
お兄さんたちは、あの人のことを変わり者だって言っていた。
見た目は確かにそんな感じがして……でも、本当にそうなのかな。
「よーし! 考えるのは面倒くさいし、明日直接聞いてみようかな!」
それがボクらしい。
たぶん大丈夫だとも思うから、自分の直感を信じよう。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
翌日。
集合時間よりも早く、ボクは冒険者ギルドに足を運んだ。
「いるかな~」
建物に入って目を向ける。
すると、あの人は昨日と同じ場所で座ってる彼を見つけた。
「いた!」
やっぱり怖い人には見えない。
ボクは彼に近づき、思い切って声をかけてみる。
「ねぇおじさん、何をしているの?」
「……」
返事がない。
聞こえていると思うけど、明らかに無視されている。
「おーい! おじさん聞こえている?」
「……オレはおじさんじゃない」
「あっ、やっぱり聞こえてたんだ。無視するなんて酷いなぁ~」
ボクはおじさんの前に座る。
「ねぇねぇ! ボクはサーシャって言うんだ! おじさんの名前は?」
「……」
「また無視してる……あっ、もしかしておじさんだから耳が遠いとか?」
「そこまで老化してないわ! あっ……」
ボクは予想通りに返してくれて、ニコニコ笑いながらおじさんを見つめる。
そんな僕を見て、おじさんは大きなため息をつく。
「はぁ……何なんだよお前」
「ボクはサーシャだよ」
「そうじゃなくて、何でオレに話しかけてるんだ? 昨日パーティーはどうした?」
「まだ集合時間じゃないんだ。おじさんと話したくて、ちょっと早く来たんだよ」
「オレと? お前……変な奴だな」
「お兄さんたちは、おじさんが変な人だって言ってたよ」
ボクがそう言うと、おじさんはピクリと反応する。
「だったら尚更話しかけてくるな」
「何で?」
「何でって、変な奴と話してると余計な心配かけるぞ」
「大丈夫だよ。だっておじさんは変な人でも、悪い人でもないでしょ?」
話しかけてみてわかった。
やっぱりボクが思った通りだ。
「お前……あんまり素直過ぎると、いずれ痛い目を見るぞ」
「大丈夫! ボクはこう見えて強いんだ」
「そうかい」
「おじさんも冒険者だよね? 依頼は受けないの?」
「受けてるぞ。適当にな」
「へぇ~ ねぇねぇ、冒険者って楽しい?」
「普通だ。オレは別に、報酬さえもらえれば何でもいいからな」
話の途中で、おじさんの視線が動く。
出入り口の付近に目を向けると、お兄さんたちがいた。
気付けば約束の時間に近づいている。
「もう行かなきゃ」
席をたち、お兄さんたちのほうへ向かう。
すると、後ろからおじさんが言う。
「気を付けろよ」
「うん! おじさんも、戻ったら名前教えてね!」
ああ、やっぱりおじさんは良い人だ。
見た目はちょっぴり怖いけど、言葉とか声に優しさが感じられる。
それにどうしてだろう。
おじさんと話している時は、変に緊張もしない。
何だかお姉ちゃんたちと話しているような感じがする。
戻ったらまた話してみたいな。