聖女三姉妹 ~本物は一人、偽物二人は出て行け? じゃあ三人で出て行きますね~
⑨
「ふふふっ」
「何だよ、ジュード」
「いやいや、実に仲が良いなと思ってね」
「はぁ? どこを見て言ってんだ?」
悲しそうにしているボクを慰めるように、おじさんが頭を撫でている。
その様子を見ながら、ジュードさんが続けて言う。
「この光景を見て、そう思わない者はいないと思うがね」
「うっ……」
やっと気づいたおじさんは、慌てて手をボクの頭から離した。
ボクとしてはもう少し撫でられていたかったから残念。
「はっははははは」
「からかいに来たのかよ」
「まさか。実はお前に伝えておきたい情報があってね」
ジュードさんは急に真剣な顔をした。
ボクもおじさんも、表情の変化に気付いて姿勢を改める。
「何かあったのか?」
「ああ。この街の北の山脈で、ドラゴンが確認された」
「ドラ――!」
驚いたボクは、思わず大きな声が出そうになって、おじさんに口をふさがれた。
「本当か?」
「確かな情報だ。最初に発見されたのは山道だったが、おそらく山頂に巣がある」
「種類は? あそこは雪も降ってるし、アイスドラゴンか」
ジュードさんはこくりと頷いて続ける。
「すでに山道を使った者たちに被害が出ている。今は一時的に山道を封鎖している状態だが……」
「あそこは意外と使うだろ。山脈を超えた先に物資を移動するには、あの道が最短ルートだからな」
「うむ。このまま放置もできない。我々騎士団でも討伐の準備を進めている」
「まぁドラゴンなら何度か戦ってるだろ。別に初めてってわけでもないし、油断しなきゃ問題ねぇよ」
そんな風にあっさり言えてしまうのか。
と、思いながらおじさんを見て、ジュードさんに視線を戻す。
「いいや、今回はそう簡単ではなさそうなのだ」
「ん?」
「ドラゴンのサイズが、今までに確認された倍はある」
「倍だと? それがホントならきついな」
「ああ。加えてドラゴンに棲家を追われた魔物たちが山を下りてきている。戦闘になれば、ドラゴン以外の魔物とも戦うことになりそうだ」
ドラゴンと魔物の大群。
想像しただけでも大変な戦いだとわかる。
ボクはごくりと息をのむ。
おじさんは冷静に話を聞きながら、ふむふむと頷いて言う。
「なるほどな。そんでオレにも協力してほしいってことか?」
「お前個人にというわけではないよ。近々ギルドから、ドラゴン討伐の依頼が出される。お前もそれに参加してほしい」
「ギルドからか。それをわざわざ言いに来たのか?」
「そうだが? お前は言わないと、面倒臭がって参加しないと思ったのでな」
それは確かにありそう。
とボクは心の中で思った。
「それは確かにありそう」
「おい」
「あっ、声に出ちゃってた?」
「思いっきり出てたな」
「はっはは、さすがタチカゼのことをわかっているね」
ジュードさんが楽しそうに笑う。
こんな話をした後なのに、余裕を感じられる。
「もちろんですよ! なんたって未来の奥さんですからね!」
「ぅ……そうなのか? タチカゼ」
「いや、こいつが言ってるだけだから。そんな犯罪者を見るような目で見るな」
「こうやっていっつも照れ隠しするんですよ~」
「照れてんじゃねぇ」
ジュードさんは呆れたように笑う。
その後は少しだけ最近の話をして、時間が来たと言ってジュードさんは先に帰っていった。
残ったボクらもそろそろ家に戻る時間だ。
「優しそうな人だったね、ジュードさん」
「まぁ見た目通りだよ。普段はな」
「実は怖い人なの?」
「いんや。ただ戦ってるときはオレより豪快だ」
「ふぅ~ん、おじさんとどっちが強いの?」
「そりゃー今はあっちだろ。オレは見ての通り引退した元騎士だからな。現役の騎士団長様に勝てるわけねぇよ」
「そっか。でもでも! ボクはおじさんのほうが格好良いと思ってるよ?」
「そうかよ。じゃあそろそろ帰るか」
そう言っておじさんが立ち上がる。
「待って!」
「ん?」
「ドラゴン討伐依頼……おじさんは受けるんだよね?」
「まぁな。わざわざ頼まれちまったし、無視できねぇだろ」
「……ボクもいいかな?」
おじさんは意外そうな顔を見せる。
ボクの質問が、普段の様子と合っていなかったからだろう。
普段は一々確認なんてしないからね。
でも、今回の相手はドラゴンらしいから、ボクがいて邪魔にならないかって思う。
「怖いのか?」
「ううん」
「じゃあ良いんじゃないか。どうせ止めても付いてくるだろ」
「うん! さっすがおじさん、ボクのことちゃんとわかってるね」
「アホか。そんなもんお前を知ってる奴なら誰でもわかる」
そう言って、おじさんは先にギルドを出て行った。
だったらボクの気持ちが本気だってこと……早く気付いてほしいまぁ。
相変わらず鈍感なおじさんだ。
そんなおじさんの昔のことが少し知れたし、一先ずは満足しておこう。
「ドラゴン……か。一応お姉ちゃんたちにも話しておこうかな?」
言ったら絶対に反対されそうだけど。
ドラゴンなんて大事だし、すぐにバレちゃいそうだから。
ちゃんと話して納得してもらおう。
大丈夫。
だってボクには、とっても強いおじさんが一緒にいるんだから。
「何だよ、ジュード」
「いやいや、実に仲が良いなと思ってね」
「はぁ? どこを見て言ってんだ?」
悲しそうにしているボクを慰めるように、おじさんが頭を撫でている。
その様子を見ながら、ジュードさんが続けて言う。
「この光景を見て、そう思わない者はいないと思うがね」
「うっ……」
やっと気づいたおじさんは、慌てて手をボクの頭から離した。
ボクとしてはもう少し撫でられていたかったから残念。
「はっははははは」
「からかいに来たのかよ」
「まさか。実はお前に伝えておきたい情報があってね」
ジュードさんは急に真剣な顔をした。
ボクもおじさんも、表情の変化に気付いて姿勢を改める。
「何かあったのか?」
「ああ。この街の北の山脈で、ドラゴンが確認された」
「ドラ――!」
驚いたボクは、思わず大きな声が出そうになって、おじさんに口をふさがれた。
「本当か?」
「確かな情報だ。最初に発見されたのは山道だったが、おそらく山頂に巣がある」
「種類は? あそこは雪も降ってるし、アイスドラゴンか」
ジュードさんはこくりと頷いて続ける。
「すでに山道を使った者たちに被害が出ている。今は一時的に山道を封鎖している状態だが……」
「あそこは意外と使うだろ。山脈を超えた先に物資を移動するには、あの道が最短ルートだからな」
「うむ。このまま放置もできない。我々騎士団でも討伐の準備を進めている」
「まぁドラゴンなら何度か戦ってるだろ。別に初めてってわけでもないし、油断しなきゃ問題ねぇよ」
そんな風にあっさり言えてしまうのか。
と、思いながらおじさんを見て、ジュードさんに視線を戻す。
「いいや、今回はそう簡単ではなさそうなのだ」
「ん?」
「ドラゴンのサイズが、今までに確認された倍はある」
「倍だと? それがホントならきついな」
「ああ。加えてドラゴンに棲家を追われた魔物たちが山を下りてきている。戦闘になれば、ドラゴン以外の魔物とも戦うことになりそうだ」
ドラゴンと魔物の大群。
想像しただけでも大変な戦いだとわかる。
ボクはごくりと息をのむ。
おじさんは冷静に話を聞きながら、ふむふむと頷いて言う。
「なるほどな。そんでオレにも協力してほしいってことか?」
「お前個人にというわけではないよ。近々ギルドから、ドラゴン討伐の依頼が出される。お前もそれに参加してほしい」
「ギルドからか。それをわざわざ言いに来たのか?」
「そうだが? お前は言わないと、面倒臭がって参加しないと思ったのでな」
それは確かにありそう。
とボクは心の中で思った。
「それは確かにありそう」
「おい」
「あっ、声に出ちゃってた?」
「思いっきり出てたな」
「はっはは、さすがタチカゼのことをわかっているね」
ジュードさんが楽しそうに笑う。
こんな話をした後なのに、余裕を感じられる。
「もちろんですよ! なんたって未来の奥さんですからね!」
「ぅ……そうなのか? タチカゼ」
「いや、こいつが言ってるだけだから。そんな犯罪者を見るような目で見るな」
「こうやっていっつも照れ隠しするんですよ~」
「照れてんじゃねぇ」
ジュードさんは呆れたように笑う。
その後は少しだけ最近の話をして、時間が来たと言ってジュードさんは先に帰っていった。
残ったボクらもそろそろ家に戻る時間だ。
「優しそうな人だったね、ジュードさん」
「まぁ見た目通りだよ。普段はな」
「実は怖い人なの?」
「いんや。ただ戦ってるときはオレより豪快だ」
「ふぅ~ん、おじさんとどっちが強いの?」
「そりゃー今はあっちだろ。オレは見ての通り引退した元騎士だからな。現役の騎士団長様に勝てるわけねぇよ」
「そっか。でもでも! ボクはおじさんのほうが格好良いと思ってるよ?」
「そうかよ。じゃあそろそろ帰るか」
そう言っておじさんが立ち上がる。
「待って!」
「ん?」
「ドラゴン討伐依頼……おじさんは受けるんだよね?」
「まぁな。わざわざ頼まれちまったし、無視できねぇだろ」
「……ボクもいいかな?」
おじさんは意外そうな顔を見せる。
ボクの質問が、普段の様子と合っていなかったからだろう。
普段は一々確認なんてしないからね。
でも、今回の相手はドラゴンらしいから、ボクがいて邪魔にならないかって思う。
「怖いのか?」
「ううん」
「じゃあ良いんじゃないか。どうせ止めても付いてくるだろ」
「うん! さっすがおじさん、ボクのことちゃんとわかってるね」
「アホか。そんなもんお前を知ってる奴なら誰でもわかる」
そう言って、おじさんは先にギルドを出て行った。
だったらボクの気持ちが本気だってこと……早く気付いてほしいまぁ。
相変わらず鈍感なおじさんだ。
そんなおじさんの昔のことが少し知れたし、一先ずは満足しておこう。
「ドラゴン……か。一応お姉ちゃんたちにも話しておこうかな?」
言ったら絶対に反対されそうだけど。
ドラゴンなんて大事だし、すぐにバレちゃいそうだから。
ちゃんと話して納得してもらおう。
大丈夫。
だってボクには、とっても強いおじさんが一緒にいるんだから。