聖女三姉妹 ~本物は一人、偽物二人は出て行け? じゃあ三人で出て行きますね~
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聖女に選ばれる人間には条件がある。
一つ、正しき心を持つ者であること。
二つ、清らかな身体であること。
三つ、穢れなき魂を持つ者であること。
そして四つ、神に愛される容姿であること。
即ち、金髪に蒼眼の乙女であることだ。
この条件に当てはまり、尚且つ神の気まぐれによって聖女は誕生する。
つまり、聖女が一人であるとは限らない。
最初に聖女が誕生して数百年が経過した現代にて、これも一つの奇跡と言えるだろう。
此度の聖女は三人。
長女である私アイラと、次女カリナ、三女サーシャ。
王国の人々は私たちを、聖女三姉妹と呼ぶ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
自室に戻った私を出迎えてくれたのは、二人の妹たちだった。
「おっつかれさま! アイラお姉ちゃんはいつも通り時間ぴったりだね!」
「当然よ。聖女たるもの、時間の管理くらい出来なきゃね」
「そうなの? じゃあボクは聖女じゃないのかな?」
なんて冗談を言っている三女のサーシャ。
年は私の二つ下の十五歳で、一番小柄で髪も短い。
「サーシャは何をしていたの?」
「ボクは騎士のおじさんたちに混ざって訓練してたよ!」
「またそんなことしていたのね……」
「だって楽しいんだもん。僕には身体を動かすほうが合ってるしね」
サーシャは三姉妹の中で一番のお転婆だ。
運動神経も高くて、聖女として祈りを捧げているより、身体を動かす方が好きだという。
一般的な聖女のイメージであるお淑やかさは欠けているけど、彼女も立派な聖女の一人。
明るく人懐っこい性格は、国民だけでなく王城の使用人たちからも好評だったりする。
「カリナは?」
「わたしは……本を読んでた」
「でしょうね。その手に持っている本も書斎から借りてきたものでしょ?」
「そう。薬学の本」
「また難しそうな本ね……そういう本って読んでいて面白いの?」
「面白い、と思う」
次女のカリナはサーシャとは全く違うタイプ。
元々引っ込み思案で、人と関わるのも好きではなかった。
聖女に選ばれる以前から、暇があれば本を読んでいることが多い。
「明日はカリナの担当よ? 聖女としてしっかり務めを果たすのよ」
「わ、わかってる……」
「声が小さいわね。そんなんじゃ聖堂に来た人も心配するわよ?」
「うぅ……大きな声を出すのは苦手なのに」
「あっははははは! カリナお姉ちゃんもボクと一緒に、お腹から声を出す練習しようよ!」
「え、えぇ……」
「サーシャはちょっと声が大き過ぎよ」
普段はこんな感じで頼りなさげなカリナだけど、何だかんだで聖女として頑張ってくれている。
祈りの力はもちろん、本から得た知識も豊富にあって、街の人たちの相談によくのったりもしているみたい。
そのお陰もあって、街の人からの信頼は厚い。
オドオドした様子も、無垢な感じがして好かれているという噂も聞いたことがある。
「やっぱりアイラお姉ちゃんが一番聖女っぽいよね~」
「それは当然でしょ。そう見えるように注意しているんだもの」
「もうアイラ一人でいいのに……」
「ダメよ。私たちは三人で聖女でしょ」
妹たち二人もそうだけど、私も彼女たちとは違う。
自分で言うのも恥ずかしいけど、長女だから二人よりもしっかりしているつもり。
性格はもちろん、好きなことや嫌いなこともバラバラだ。
そんな私たちの共通点は、聖女であることと容姿。
三人とも、濃さや長さに違いはあれ、金色の髪と青い瞳をもっている。
そしてもう一つの共通点は、三人とも孤児だということ。
私が二歳、カリナが一歳、サーシャが生後間もない頃。
魔法の力で眠らされて、三人で同じゆりかごに入れられたまま、街の小さな教会に捨てられていた。
ご丁寧にそれぞれの名前と、養育費も添えてあったそうだ。
そこに私たちが三人姉妹だということも書かれていて、五年前までは捨てられていた教会でお世話になっていた。
私たちは自分の両親を知らない。
それどころか、この国の人間だったかも定かではないほど。
月日が流れ、聖女になってからは、この屋敷で三人とも暮らしている。
一日交替で大聖堂に赴き、聖女として振舞って役目を果たしながら、それなりに充実した毎日を送っている。
戸惑いのほうが多かった日々も、少しは慣れてきた頃合いだろう。
「明日は何して遊ぼうかな~」
「人前は嫌だなぁ」
「はぁ……この子たちは本当にもう」
二人とも小さい頃から変わらない。
私たちが聖女なんて、最初は何かの間違いだと思った。
だけど、選ばれてしまったからには逃げられない。
足りない部分の多い私たちだけど、三人もいれば補い合える。
カリナとサーシャの分まで、私が聖女らしく振舞えば良い。
その代わり二人には、私にも出来ない方法で、聖女として頑張ってもらうから。
そうやって助け合って生きていく。
この先もずっと、聖女として、姉妹として。
一つ、正しき心を持つ者であること。
二つ、清らかな身体であること。
三つ、穢れなき魂を持つ者であること。
そして四つ、神に愛される容姿であること。
即ち、金髪に蒼眼の乙女であることだ。
この条件に当てはまり、尚且つ神の気まぐれによって聖女は誕生する。
つまり、聖女が一人であるとは限らない。
最初に聖女が誕生して数百年が経過した現代にて、これも一つの奇跡と言えるだろう。
此度の聖女は三人。
長女である私アイラと、次女カリナ、三女サーシャ。
王国の人々は私たちを、聖女三姉妹と呼ぶ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
自室に戻った私を出迎えてくれたのは、二人の妹たちだった。
「おっつかれさま! アイラお姉ちゃんはいつも通り時間ぴったりだね!」
「当然よ。聖女たるもの、時間の管理くらい出来なきゃね」
「そうなの? じゃあボクは聖女じゃないのかな?」
なんて冗談を言っている三女のサーシャ。
年は私の二つ下の十五歳で、一番小柄で髪も短い。
「サーシャは何をしていたの?」
「ボクは騎士のおじさんたちに混ざって訓練してたよ!」
「またそんなことしていたのね……」
「だって楽しいんだもん。僕には身体を動かすほうが合ってるしね」
サーシャは三姉妹の中で一番のお転婆だ。
運動神経も高くて、聖女として祈りを捧げているより、身体を動かす方が好きだという。
一般的な聖女のイメージであるお淑やかさは欠けているけど、彼女も立派な聖女の一人。
明るく人懐っこい性格は、国民だけでなく王城の使用人たちからも好評だったりする。
「カリナは?」
「わたしは……本を読んでた」
「でしょうね。その手に持っている本も書斎から借りてきたものでしょ?」
「そう。薬学の本」
「また難しそうな本ね……そういう本って読んでいて面白いの?」
「面白い、と思う」
次女のカリナはサーシャとは全く違うタイプ。
元々引っ込み思案で、人と関わるのも好きではなかった。
聖女に選ばれる以前から、暇があれば本を読んでいることが多い。
「明日はカリナの担当よ? 聖女としてしっかり務めを果たすのよ」
「わ、わかってる……」
「声が小さいわね。そんなんじゃ聖堂に来た人も心配するわよ?」
「うぅ……大きな声を出すのは苦手なのに」
「あっははははは! カリナお姉ちゃんもボクと一緒に、お腹から声を出す練習しようよ!」
「え、えぇ……」
「サーシャはちょっと声が大き過ぎよ」
普段はこんな感じで頼りなさげなカリナだけど、何だかんだで聖女として頑張ってくれている。
祈りの力はもちろん、本から得た知識も豊富にあって、街の人たちの相談によくのったりもしているみたい。
そのお陰もあって、街の人からの信頼は厚い。
オドオドした様子も、無垢な感じがして好かれているという噂も聞いたことがある。
「やっぱりアイラお姉ちゃんが一番聖女っぽいよね~」
「それは当然でしょ。そう見えるように注意しているんだもの」
「もうアイラ一人でいいのに……」
「ダメよ。私たちは三人で聖女でしょ」
妹たち二人もそうだけど、私も彼女たちとは違う。
自分で言うのも恥ずかしいけど、長女だから二人よりもしっかりしているつもり。
性格はもちろん、好きなことや嫌いなこともバラバラだ。
そんな私たちの共通点は、聖女であることと容姿。
三人とも、濃さや長さに違いはあれ、金色の髪と青い瞳をもっている。
そしてもう一つの共通点は、三人とも孤児だということ。
私が二歳、カリナが一歳、サーシャが生後間もない頃。
魔法の力で眠らされて、三人で同じゆりかごに入れられたまま、街の小さな教会に捨てられていた。
ご丁寧にそれぞれの名前と、養育費も添えてあったそうだ。
そこに私たちが三人姉妹だということも書かれていて、五年前までは捨てられていた教会でお世話になっていた。
私たちは自分の両親を知らない。
それどころか、この国の人間だったかも定かではないほど。
月日が流れ、聖女になってからは、この屋敷で三人とも暮らしている。
一日交替で大聖堂に赴き、聖女として振舞って役目を果たしながら、それなりに充実した毎日を送っている。
戸惑いのほうが多かった日々も、少しは慣れてきた頃合いだろう。
「明日は何して遊ぼうかな~」
「人前は嫌だなぁ」
「はぁ……この子たちは本当にもう」
二人とも小さい頃から変わらない。
私たちが聖女なんて、最初は何かの間違いだと思った。
だけど、選ばれてしまったからには逃げられない。
足りない部分の多い私たちだけど、三人もいれば補い合える。
カリナとサーシャの分まで、私が聖女らしく振舞えば良い。
その代わり二人には、私にも出来ない方法で、聖女として頑張ってもらうから。
そうやって助け合って生きていく。
この先もずっと、聖女として、姉妹として。