聖女三姉妹 ~本物は一人、偽物二人は出て行け? じゃあ三人で出て行きますね~
エピローグ
壱
それぞれの恋。
出会い、惹かれあい、育み、確かめ合う。
運命に導かれた三姉妹は、未来を共に歩くパートナーを見つけた。
しかし、それは互いに知らぬことだ。
様々な事情や感情によって、伝えられずに月日が流れている。
「サーシャ、お皿並べるの手伝って」
「はーい!」
「わたしも手伝う」
そうして今日、三人は決意していた。
(今日こそ……)
(……うん)
(よーし)
(((二人に話そう!)))
朝食をとりながら機を窺う。
三人とも話したいことは同じで、ちょっぴり恥ずかしい内容だ。
互いにどんな反応をするのか気になって、そわそわしている。
普段なら気付く姉妹の変化にも、今日ばかりは疎くなってしまうのは、彼女たちが恋する乙女だからだろう。
そして――
「あのね」
「あの……」
「あのさ!」
三人はほぼ同時に話を切り出そうとした。
互いに目を合わせ、その表情から似たようなことを考えていたのだと察する。
おかしくて笑ってしまう。
そして、アイラが二人に提案する。
「三人同時に言いましょう」
「わかった」
「うん!」
どうせ一緒ならと、二人もそれに同意した。
アイラが「せーの」と号令をかけて……
「婚約者ができました」
「こ、恋人ができた」
「カレシができたんだよ!」
三人は告白した。
ずっと言いたかったことを、家族に打ち明ける瞬間。
羞恥と喜びが半々くらいの絶妙な感覚に、心と体が震えている。
「アイラお姉ちゃんは婚約者?」
「そうよ」
「もしかして相手ってあの王子様?」
「よくわかったわね」
「やっぱり! だってこの前一緒にいる所みちゃったもん」
「わたしも見た」
「そ、そうだったのね……」
アイラは恥ずかしそうに頬を赤くして、視線を横に逸らす。
ハミルと一緒にいるときの自分は、姉としてはなく恋する乙女の雰囲気全開だ。
それを見られていたと思うと、それはもう恥ずかしくて仕方がない。
「ねぇねぇ! どんな風に告白されたの?」
「えぇ?」
「わたしも知りたい」
「カリナまで? う~ん……そうね」
アイラは照れながらも語り出す。
ちょっぴり自慢したい気持ちもあったりしたようだ。
彼女が話し終えると、話題はそのままカリナへと移る。
「わたし?」
「うん! カリナお姉ちゃんだけぜーんぜん予想できないもん」
「私もよ。何か隠してるってことは最初から気付いてたけどね」
「あ、えっと……全部は話せないけど……いい?」
二人はこくりと頷く。
カリナはトボトボと話し出す。
彼女の場合は国の秘密にかかわっているから、何かと伝えにくい。
大まかな事情は省き、恋人が出来た経緯を話している。
「わ、わたしの話はいいから、サーシャちゃん教えて」
「ボク? ボクはねぇ~ えっへへ」
サーシャの場合はわかりやすい。
同じ冒険者であり、命の恩人でもある人だから。
とは言え、年の差は三人の中でもダントツのトップ。
聞いていて少し不安になる二人だったが、楽しそうに話すサーシャを見て、その不安はどこかへ消えてしまった。
三人がそれぞれの恋を伝え合い、食卓は幸福な笑顔で満ちる。
それと同じくらい、もっと知りたいという欲が出てくる。
ここでサーシャが提案する。
「そうだ! 今度ボクのカレシを紹介するから、二人も一緒につれてきてよ!」
「それは……」
「いきなり過ぎないかしら?」
「大丈夫! だっていつかは家族になるんだよ?」
家族になる。
その言葉に惹かれて、姉二人は未来を連想する。
「確かにそうね」
「うん。でも……来てくれるかな」
「それはカリナお姉ちゃん次第だよ」
おそらく一番難易度の高い相手は、ナベリスだろう。
そもそも外に出たがらない彼だ。
交渉は他の二人より時間がかかると思われる。
「いつにする?」
「い、一週間くらいほしい」
「じゃあ一週間後の夜にしよ! お仕事が終わってから」
予定を立てた三人は当日を待ちわびる。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
一週間はあっという間に過ぎ、約束の日を迎えた。
場所はクレンベルでも人気のレストラン。
時間を午後の七時に指定し、三人は一旦家に戻ってから出発する。
だから――
「「「……」」」
先に男性陣だけが到着し、微妙な空気になることもある。
王子らしく堂々と座っているハミル。
二人と視線を合わせないように、窓の外を見つめているナベリス。
腕を組んでため息をつくタチカゼ。
奇しくも三人は、少し早めについてたほうがいいか、という同じ思考の元に集まってしまった。
現在の時刻は午後六時四十分である。
三人はそれぞれ頭のなかでブツブツ呟く。
ハミルの場合――
紹介したい人がいるってそういうことか。
てっきりアイラの妹だけだと思ったが、しかもこの二人とはな。
ナベリス博士はともかく、タチカゼは俺のことを覚えているだろうか。
ナベリスの場合――
全くカリナめ。
あまりに頼むから出てきたが、やはり来るんじゃなかったな。
ここは人が多いし、相手の二人は王子と冒険者だぞ。
明らかに僕とは合わない二人じゃないか。
タチカゼの場合――
おいおい、勘弁してくれよサーシャ。
ただでさえこういう場所は苦手だっていうのによぉ。
それに何でハミル殿下が来てるんだ?
いやまぁ、そう言うことなんだろうけど。
三人とも頭の中は多弁だった。
と同時に、心から強く願う。
いいから早く来てくれ。
出会い、惹かれあい、育み、確かめ合う。
運命に導かれた三姉妹は、未来を共に歩くパートナーを見つけた。
しかし、それは互いに知らぬことだ。
様々な事情や感情によって、伝えられずに月日が流れている。
「サーシャ、お皿並べるの手伝って」
「はーい!」
「わたしも手伝う」
そうして今日、三人は決意していた。
(今日こそ……)
(……うん)
(よーし)
(((二人に話そう!)))
朝食をとりながら機を窺う。
三人とも話したいことは同じで、ちょっぴり恥ずかしい内容だ。
互いにどんな反応をするのか気になって、そわそわしている。
普段なら気付く姉妹の変化にも、今日ばかりは疎くなってしまうのは、彼女たちが恋する乙女だからだろう。
そして――
「あのね」
「あの……」
「あのさ!」
三人はほぼ同時に話を切り出そうとした。
互いに目を合わせ、その表情から似たようなことを考えていたのだと察する。
おかしくて笑ってしまう。
そして、アイラが二人に提案する。
「三人同時に言いましょう」
「わかった」
「うん!」
どうせ一緒ならと、二人もそれに同意した。
アイラが「せーの」と号令をかけて……
「婚約者ができました」
「こ、恋人ができた」
「カレシができたんだよ!」
三人は告白した。
ずっと言いたかったことを、家族に打ち明ける瞬間。
羞恥と喜びが半々くらいの絶妙な感覚に、心と体が震えている。
「アイラお姉ちゃんは婚約者?」
「そうよ」
「もしかして相手ってあの王子様?」
「よくわかったわね」
「やっぱり! だってこの前一緒にいる所みちゃったもん」
「わたしも見た」
「そ、そうだったのね……」
アイラは恥ずかしそうに頬を赤くして、視線を横に逸らす。
ハミルと一緒にいるときの自分は、姉としてはなく恋する乙女の雰囲気全開だ。
それを見られていたと思うと、それはもう恥ずかしくて仕方がない。
「ねぇねぇ! どんな風に告白されたの?」
「えぇ?」
「わたしも知りたい」
「カリナまで? う~ん……そうね」
アイラは照れながらも語り出す。
ちょっぴり自慢したい気持ちもあったりしたようだ。
彼女が話し終えると、話題はそのままカリナへと移る。
「わたし?」
「うん! カリナお姉ちゃんだけぜーんぜん予想できないもん」
「私もよ。何か隠してるってことは最初から気付いてたけどね」
「あ、えっと……全部は話せないけど……いい?」
二人はこくりと頷く。
カリナはトボトボと話し出す。
彼女の場合は国の秘密にかかわっているから、何かと伝えにくい。
大まかな事情は省き、恋人が出来た経緯を話している。
「わ、わたしの話はいいから、サーシャちゃん教えて」
「ボク? ボクはねぇ~ えっへへ」
サーシャの場合はわかりやすい。
同じ冒険者であり、命の恩人でもある人だから。
とは言え、年の差は三人の中でもダントツのトップ。
聞いていて少し不安になる二人だったが、楽しそうに話すサーシャを見て、その不安はどこかへ消えてしまった。
三人がそれぞれの恋を伝え合い、食卓は幸福な笑顔で満ちる。
それと同じくらい、もっと知りたいという欲が出てくる。
ここでサーシャが提案する。
「そうだ! 今度ボクのカレシを紹介するから、二人も一緒につれてきてよ!」
「それは……」
「いきなり過ぎないかしら?」
「大丈夫! だっていつかは家族になるんだよ?」
家族になる。
その言葉に惹かれて、姉二人は未来を連想する。
「確かにそうね」
「うん。でも……来てくれるかな」
「それはカリナお姉ちゃん次第だよ」
おそらく一番難易度の高い相手は、ナベリスだろう。
そもそも外に出たがらない彼だ。
交渉は他の二人より時間がかかると思われる。
「いつにする?」
「い、一週間くらいほしい」
「じゃあ一週間後の夜にしよ! お仕事が終わってから」
予定を立てた三人は当日を待ちわびる。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
一週間はあっという間に過ぎ、約束の日を迎えた。
場所はクレンベルでも人気のレストラン。
時間を午後の七時に指定し、三人は一旦家に戻ってから出発する。
だから――
「「「……」」」
先に男性陣だけが到着し、微妙な空気になることもある。
王子らしく堂々と座っているハミル。
二人と視線を合わせないように、窓の外を見つめているナベリス。
腕を組んでため息をつくタチカゼ。
奇しくも三人は、少し早めについてたほうがいいか、という同じ思考の元に集まってしまった。
現在の時刻は午後六時四十分である。
三人はそれぞれ頭のなかでブツブツ呟く。
ハミルの場合――
紹介したい人がいるってそういうことか。
てっきりアイラの妹だけだと思ったが、しかもこの二人とはな。
ナベリス博士はともかく、タチカゼは俺のことを覚えているだろうか。
ナベリスの場合――
全くカリナめ。
あまりに頼むから出てきたが、やはり来るんじゃなかったな。
ここは人が多いし、相手の二人は王子と冒険者だぞ。
明らかに僕とは合わない二人じゃないか。
タチカゼの場合――
おいおい、勘弁してくれよサーシャ。
ただでさえこういう場所は苦手だっていうのによぉ。
それに何でハミル殿下が来てるんだ?
いやまぁ、そう言うことなんだろうけど。
三人とも頭の中は多弁だった。
と同時に、心から強く願う。
いいから早く来てくれ。