聖女三姉妹 ~本物は一人、偽物二人は出て行け? じゃあ三人で出て行きますね~
弐
気まずい雰囲気になる彼氏陣。
約束の時間までは残り二十分ほどある。
多少は早く来ると思われるが、それでも十数分はこのままだろう。
「あーうん、彼女たちが来るまで時間もあるし、簡単に自己紹介だけ済ませておかないか?」
最初に静寂を破ったのはハミルだった。
王子らしく堂々と、彼らしい役回りだろう。
ハミルが話しかけたお陰で、二人も会話をする理由が出来る。
「そうだな」
「まっ、じっと待ってるのも退屈だしいいか」
「ああ。それに何の因果か、お互い初対面ではなさそうだしな」
アトワール王国第二王子。
王国直属の研究者。
元王国騎士団所属の冒険者。
それぞれに役職があり、顔を合わせる機会はゼロではなかった。
「まずは俺から。アトワール王国第二王子、ハミル・ウェルネスだ」
「僕はナベリス・グローマン。役割は一応機密事項だが、二人は知っているし省こう」
「オレはタチカゼだ。今は冒険者だが、十年前までは王国の騎士団にいたぜ。殿下ともその頃に会ってるんだが」
「もちろん覚えている。何度か剣の稽古もつけてもらったしな」
「はっはっはっ、そんなこともあったな。あの頃の小せぇ王子が、立派になったもんだ」
タチカゼはハミルが十歳の頃までを知っている。
付き合いの長さで言えば、彼女たちを含めても一番長いかもしれない。
「タチカゼさんとナベリスは初対面かな?」
「いいや、何度か会ってるぞ」
「そうだな」
「へぇ~ あまり接点はなさそうだが」
「そうでもねぇさ。騎士団にいた頃は護衛を任されたり、冒険者になってからも研究用の素材集めで顔合わせたりしたからな」
「ああ。最近だと例の薬の調合に必要な素材を依頼した」
「そうだったのか」
例の薬というのは、大流行した新種のウイルスに効く薬のこと。
ナベリスを中心とした研究者と医療者によって、あの薬は完成された。
タチカゼも少なからずそれに貢献している。
「二人とも感謝する。お陰で王国は救われた」
「大したことはしていない」
「そうだぜ。どっちかっていうと、殿下のほうが大変だったろ?」
「ふっ、まぁそれなりにな」
互いの苦労を握らい合い、徐々に緊張がほどけていく。
「つーかさ。この集まりって何なのか聞いているか?」
「僕は詳しく聞いていないよ」
「俺も全部は話されてない。けど、もう予想はついている。二人もそうだろう?」
「何となくな。そういや、他の姉妹とは会ったことないんだよなーオレ。二人はあるか?」
「いや、俺も初めてだよ」
「僕はそもそも他人とは関わらないからな」
姉妹がいることは知っていながら、互いに初対面となる。
思い浮かべるのは、自分たちが知っている一人のみ。
「ちゃんと時間通り来るか?」
「そこは心配ないだろう。しっかり者だから」
「えっ、そうなのか? じゃあオレの所だけか? やかましいほど元気なのは良いが、そういう所はまぁまぁテキトーだぞ」
「やかましいという点では、僕の助手も当てはまりそうにない」
「へぇ~ 姉妹だから似てるとか思ってたけど、結構違うみたいだな」
三姉妹には個性がある。
それを各々の会話から垣間見て、興味が湧いてくる三人。
彼女たちが来るまで、しばらくは賑やかに過ごせそうだ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
一方その頃。
家に戻った三人は、レストランに行く準備を進めていた。
「う~ん、どれを着て行こうかな~」
「サーシャちゃん、そろそろ時間」
「えぇー、もう?」
「遅くなったら皆さんに迷惑だわ。私も一緒に選んであげるから早く決めましょう」
互いのカレシに会うということで、珍しくサーシャも見た目に気を配っている様子。
時間は六時半を過ぎていた。
レストランは、家から歩いて十分くらい。
そろそろ出発しようと思った時、家の扉をノックする音が聞こえる。
「誰かしら?」
アイラが何気なく扉を開ける。
すると、そこに立っていたのは予想外の人物だった。
「久しぶりだね~ アイラ」
「で、デリント王子!?」
アイラの声に二人が反応して、急いで玄関へと向かう。
間違いなく、そこにいたのはデリント王子だった。
かつて捨てた国の王子で、アイラにとっては元婚約者。
出来れば二度と会いたくないと思っていた相手が、いやらしいニヤけ顔を見せている。
「いや~ ここまでとても、とても長かったよ。随分と遠くまで移動したものだね」
「ど、どうしてここに?」
「ふっ、そんなの決まっているだろう?」
そう言って、デリント王子は指をならす。
すると、後ろから三人の兵士が部屋に入り込み、彼女たちに手を伸ばす。
「なっ、ちょっと」
「嫌……」
「離して!」
抑え込まれてしまう三人。
手と足を縄で拘束され、部屋の奥へと押し込まれる。
口も布でふさがれて声が出せない。
助けを呼びたくても、部屋の中から外へは響かないだろう。
「うんうん、ともて良い眺めだね~」
「ぅ~」
「大変だったんだよ? 君たちが勝手に出て行ってしまうから。でも、ようやく見つけた」
何て卑猥で気持ち悪い笑顔なのだろう。
三人はぞっとして、これからされることを考え怯える。
約束の時間までは残り二十分ほどある。
多少は早く来ると思われるが、それでも十数分はこのままだろう。
「あーうん、彼女たちが来るまで時間もあるし、簡単に自己紹介だけ済ませておかないか?」
最初に静寂を破ったのはハミルだった。
王子らしく堂々と、彼らしい役回りだろう。
ハミルが話しかけたお陰で、二人も会話をする理由が出来る。
「そうだな」
「まっ、じっと待ってるのも退屈だしいいか」
「ああ。それに何の因果か、お互い初対面ではなさそうだしな」
アトワール王国第二王子。
王国直属の研究者。
元王国騎士団所属の冒険者。
それぞれに役職があり、顔を合わせる機会はゼロではなかった。
「まずは俺から。アトワール王国第二王子、ハミル・ウェルネスだ」
「僕はナベリス・グローマン。役割は一応機密事項だが、二人は知っているし省こう」
「オレはタチカゼだ。今は冒険者だが、十年前までは王国の騎士団にいたぜ。殿下ともその頃に会ってるんだが」
「もちろん覚えている。何度か剣の稽古もつけてもらったしな」
「はっはっはっ、そんなこともあったな。あの頃の小せぇ王子が、立派になったもんだ」
タチカゼはハミルが十歳の頃までを知っている。
付き合いの長さで言えば、彼女たちを含めても一番長いかもしれない。
「タチカゼさんとナベリスは初対面かな?」
「いいや、何度か会ってるぞ」
「そうだな」
「へぇ~ あまり接点はなさそうだが」
「そうでもねぇさ。騎士団にいた頃は護衛を任されたり、冒険者になってからも研究用の素材集めで顔合わせたりしたからな」
「ああ。最近だと例の薬の調合に必要な素材を依頼した」
「そうだったのか」
例の薬というのは、大流行した新種のウイルスに効く薬のこと。
ナベリスを中心とした研究者と医療者によって、あの薬は完成された。
タチカゼも少なからずそれに貢献している。
「二人とも感謝する。お陰で王国は救われた」
「大したことはしていない」
「そうだぜ。どっちかっていうと、殿下のほうが大変だったろ?」
「ふっ、まぁそれなりにな」
互いの苦労を握らい合い、徐々に緊張がほどけていく。
「つーかさ。この集まりって何なのか聞いているか?」
「僕は詳しく聞いていないよ」
「俺も全部は話されてない。けど、もう予想はついている。二人もそうだろう?」
「何となくな。そういや、他の姉妹とは会ったことないんだよなーオレ。二人はあるか?」
「いや、俺も初めてだよ」
「僕はそもそも他人とは関わらないからな」
姉妹がいることは知っていながら、互いに初対面となる。
思い浮かべるのは、自分たちが知っている一人のみ。
「ちゃんと時間通り来るか?」
「そこは心配ないだろう。しっかり者だから」
「えっ、そうなのか? じゃあオレの所だけか? やかましいほど元気なのは良いが、そういう所はまぁまぁテキトーだぞ」
「やかましいという点では、僕の助手も当てはまりそうにない」
「へぇ~ 姉妹だから似てるとか思ってたけど、結構違うみたいだな」
三姉妹には個性がある。
それを各々の会話から垣間見て、興味が湧いてくる三人。
彼女たちが来るまで、しばらくは賑やかに過ごせそうだ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
一方その頃。
家に戻った三人は、レストランに行く準備を進めていた。
「う~ん、どれを着て行こうかな~」
「サーシャちゃん、そろそろ時間」
「えぇー、もう?」
「遅くなったら皆さんに迷惑だわ。私も一緒に選んであげるから早く決めましょう」
互いのカレシに会うということで、珍しくサーシャも見た目に気を配っている様子。
時間は六時半を過ぎていた。
レストランは、家から歩いて十分くらい。
そろそろ出発しようと思った時、家の扉をノックする音が聞こえる。
「誰かしら?」
アイラが何気なく扉を開ける。
すると、そこに立っていたのは予想外の人物だった。
「久しぶりだね~ アイラ」
「で、デリント王子!?」
アイラの声に二人が反応して、急いで玄関へと向かう。
間違いなく、そこにいたのはデリント王子だった。
かつて捨てた国の王子で、アイラにとっては元婚約者。
出来れば二度と会いたくないと思っていた相手が、いやらしいニヤけ顔を見せている。
「いや~ ここまでとても、とても長かったよ。随分と遠くまで移動したものだね」
「ど、どうしてここに?」
「ふっ、そんなの決まっているだろう?」
そう言って、デリント王子は指をならす。
すると、後ろから三人の兵士が部屋に入り込み、彼女たちに手を伸ばす。
「なっ、ちょっと」
「嫌……」
「離して!」
抑え込まれてしまう三人。
手と足を縄で拘束され、部屋の奥へと押し込まれる。
口も布でふさがれて声が出せない。
助けを呼びたくても、部屋の中から外へは響かないだろう。
「うんうん、ともて良い眺めだね~」
「ぅ~」
「大変だったんだよ? 君たちが勝手に出て行ってしまうから。でも、ようやく見つけた」
何て卑猥で気持ち悪い笑顔なのだろう。
三人はぞっとして、これからされることを考え怯える。