学校の怪談
怜美は迷った挙句勇気を出して「あの、猫の声が聞こえてきたもので、つい……」と、説明をした。


「あ、もしかして庭に出てきてんのかな」


お兄さんはそう呟いて門をあけた。


「あ、君、猫見たいとか?」


門を入っていく前に振り向き、そう質問する。


怜美はうんうんと何度もうなづいた。


このチャンスを逃したら話を聞けなくなってしまう。


お兄さんについて門をくぐると、広い日本庭園が現れた。


怜美の部屋5つ分くらいのある庭に驚きの声を上げる。


「あれ、出てきてないな」


広い庭をざっと見回してお兄さんは首をかしげている。


「い、家の中にいる声が聞こえてきたのかもしれません」


説明しながら背中に汗が流れていく。


だってここの庭はすごく広い。


家の中の音が道路まで聞こえてくることはほとんどなさそうだ。


しかしお兄さんは違和感に気づくことなく「そうかもなぁ」と呟いて玄関へ向かって歩き出した。


怜美はまたその後ろをついて行ったが、お兄さんはなにも言わなかった。
< 106 / 128 >

この作品をシェア

pagetop