学校の怪談
そこから更に10分ほど歩いた場所には小さなアパートが建っていた。


あちこちにヒビが入っていて新築とは言いがたいが、100年も経過しているようには見えない。


資料にあった家はとっくになくなってしまったのだろう。


アパートの前で立ち尽くしていると、隣の家の人が出てきた。


手にはエコバッグを下げていて、これから晩御飯の買い物にでも行くのだろう。


怜美が何気なくその様子を見ていると、おばさんと目があってしまった。


気まずくて視線をそらす。


「こんにちは」


おばさんは意外と気さくに挨拶をしてきてくれた。


怜美を近所の子供だと思ったのかもしれない。


怜美はホッとして挨拶を返した。


「あなた○○小学校の子ね? 迷子かなにか?」


「い、いえ。あの、昔ここに家が建っていたみたいで、その人を訪ねにきたんです」


怜美は早口で説明した。


「あらそうなの? でもここはずっとアパートだったわよ?」


きっと、おばさんがここへ来たときにはすでにアパートになっていたのだろう。


「100年くらい前のことなんです。学校の歴史を調べていると、学校に住み着いた猫たちがもらわれていったことがわかったんです」


「その家を訪ねて回っているってこと?」


「はい。学校の、自由研究で」
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