学校の怪談
「怜美ちゃんはどの子にするの?」


聞かれて振り向くと雪ちゃんが真っ白な猫を抱っこしていた。


雪ちゃんに良く似合う。


「私は、えっと……」


周囲を見回していると、猫田さんがしゃがみこんでゲージを見つめていた。


近づいて同じようにしゃがみこんでみると、そこには男性の家で保護された三毛猫が眠っていた。


体を丸めて少しも顔を上げようとしない。


「この子、猫田さんの子孫なんですよね?」


「はいそうです」


猫田さんは真剣なまなざしで子猫を見つめる。


「もしかしたら耳が聞こえないのかもしれません」


「え……?」


怜美は目を見開いて子猫を見た。


子猫は相変わらず眠り続けている。


これだけ回りに動物や人がいても、喧騒なんて聞こえていないかのように。


「こういう子は、誰にも引き取られません」


猫田さんは呟くように言って指先で檻を触れた。


その手はスッと檻を通り抜けて子猫の毛を優しくなでた。


なにも感じないはずの子猫が顔を上げて猫田さんへ向けて「ミャア」と。一声ないた。
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