学校の怪談
☆☆☆

エミから話を聞いてわかったのは、エミは10年前にこの学校のトイレで死んだということだった。


原因は心臓発作。


生まれつき心臓に穴が開いていたエミさんは激しい運動などを避けて暮らしていた。


しかし、その日の発作は突然訪れた。


放課後のトイレの中で。


エミは懸命に助けを呼んだけれどろくに声も出せないまま、死んでしまったのだそうだ。


怜美はエミの話を聞いて胸が痛くなるのを感じていた。


もしも自分がエミだったら?


誰もいないトイレの中で発作に襲われて、恐怖と苦しみを感じながら死んで行ったら?


とてもじゃないけれど素直に成仏なんてできなさそうだ。


「でも、私が死んだことはもういいんです」


エミの言葉に怜美は目を見開いた。


てっきりエミには遣り残したことが沢山あるのだと思っていた。


なにせ、怜美と同じ年齢で死んでしまったのだから。


「じゃあ、どうしてかくりよから出てきたんだい?」


猫田さんの表情はさっきよりも険しくなっている。


死んだことに未練がないとなると、かくりよに不満があるということだからだろう。


「私、両親のことが気がかりなんです」
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