学校の怪談
「そっちは猫田さんか。もしや僕を連れ戻しに来たのかな?」


飯田校長は怜美の後ろに立っている猫田さんに視線を向けて言った。


「無理矢理に連れ戻したりはしません。あなたの心残りをを晴らさないと、かくりよに連れ戻してもまたこっちへ出てきてしまうでしょう? それとも、かくりよに不満があって逃げたんですか?」


猫田さんからの質問に飯田校長は少し視線をそらせた。


「かくりよはとてもいい場所です。生きていた頃と代わらない生活。いや、それ以上のものが手に入る」


「じゃあ、やっぱり心残りがあるんですか?」


質問したのは怜美だった。


飯田校長はきっと殺されたことが無念なのだろうと思っていた。


しかし、答えは違った。


「そうだね。どうしても、あの被害者の女の子のことが気がかりでね」


目を伏せて答える飯田校長に怜美は目を見開いた。


「被害者の子……? 殺されてしまったことが無念なんじゃないんですか?」


今度は飯田校長が驚いた表情を浮かべる番だった。


「僕が死んだのは寿命みたいなものだよ。どんな死に方でも、結局は決められていたことなんだと思うんだ」


「そんな……」


無理矢理命を絶たれたのに、そんな風に考えられるなんて。


怜美にはわからなくて口を閉じてしまった。
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