学校の怪談

笑っている理由

絵画を小脇に抱えて怜美は学校を出た。


途中で先生と遭遇しなかったことは幸いだ。


「女子生徒さんの家、わかるんですか?」


布をかけた絵画へ向けて怜美は質問をする。


できるだけ小さな声でだ。


「わかるよ。ちゃんと覚えている」


飯田校長にとってはそれくらい忘れられない出来事だったんだろう。


布がかけられた状態でも、飯田校長は当時の地図を思い出しながら道を教えてくれた。


小さな商店があったり、珍しい黄色いポストがあったりして、怜美も迷わずにその家にたどり着くことができた。


そこは小さな一軒屋で、表札は村上と書かれている。


「飯田校長、その女の子の苗字は村上で合っていますか?」


「村上……」


布の下でそう言ったきり黙りこんでしまった。


違うのかもしれない。


「そもそもその事件が起こったのって、いつですか?」


「そうだな、今から20年くらい昔だった」


20年!


怜美はその年月を考えてメマイを起こしそうだった。
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