Tear Flowers〜新しい道の始まり〜

「盗まれたのは、ホワイトタイガーが三頭、シマフクロウ二羽、クロサイが四頭、ヘルマンリクガメが一頭、ブッシュマンウサギが一羽です」

「全部絶滅危惧種か、絶滅の恐れがある動物だよ！」

フィオナが見えた動物を口にすると、エヴァンが驚きと怒りの混ざった声で言う。運転をしながらシオンが訊ねた。

「私は動物に詳しくないので教えてほしいんだけど、ブッシュマンウサギとはどんなウサギなんだ？」

「ブッシュマンウサギは、数世紀に渡る農地化や家畜の放牧によって生息地の八十%を失い、個体数が過去百年で七十%も減少してしまったウサギです。現在では、成体で二百羽以下と推定されています」

エヴァンがそう言い、拳を握り締める。フィオナはその様子を見ながらポツリと言った。

「ホワイトタイガーは毛皮、クロサイはツノの乱獲のために人間の手によって殺され、滅ぼされかけている……」

「うん、同じ人としてありえないよ……」

エヴァンの悲しげな瞳に、フィオナの心が一瞬動いたような気がした。いつもなら決して出てこないであろう言葉が出てくる。