ワケあり女子高生、イケメン生徒会と同居します。
「恋々愛!」

っ!!!

この声……。

ーフワッ。

聞き覚えのある声にゆっくりと顔を上げたと同時に、暖かい何かが私を包み込む。

目の前には案の定、想像通りの人物が立っていて……。

「梅乃、くん……」

私の思った通り、声の主は梅乃くんだった。

そして、その一歩下がったところには傘をさして待つ梓川くんの姿も。

「こんなところで何してるの」

梅乃くんは私の顔をのぞき込むようにスッと私の前にしゃがみ込んだ。

真っ直ぐな瞳と再び視線が絡む。

「えっと……雨宿り……してた、かな?」

なんとなく女子寮でのことは言えなくて、捻り出した言葉。

しかし、それを見抜いているのか、私の答えを聞いても梅乃くんはなおも私の方をジッと見つめたまま。

梅乃くんなら、何も言わなくても全部見透かしてそう……。

ーポタッ。

……あっ。

ふわふわの赤髪に雨粒がポツ、ポツと落ちていくのが視界に入った。

このままじゃ梅乃くんが濡れちゃう。

それに……。

「これ……」

さっき、私の名前を呼びながら優しくかけてくれた温かいブレザー。

ワイシャツとネクタイ姿の梅乃くんから察するに、梅乃くんのブレザーだろうし……。

梅乃くんのほうが風邪引いちゃうよ。

「着てて。恋々愛、寒そうだから」

梅乃くん……。

梅乃くんは常にポーカーフェイスで、何を考えているのかよくわからない。

……でも──────────

いつも真っ直ぐに私を見つめる瞳が不安げに揺れ、私の胸をギューッと締めつけた。

心配……してくれてる。

梅乃くんのブレザーをギュッと握りしめながら、温かさに包まれる。

体も、心も、あったかい……──────────

梅乃くんの瞳を見つめ返す視界が滲んでいく。

「恋々愛」

梅乃くんの優しい声。

名前を呼ばれるだけで、こんなにも気持ちが落ち着くのはなんでだろう?

こんなに心地いいのは、どうして……?

心配そうに揺らいでいた梅乃くんの瞳は、いつの間にか真っ直ぐに私を見つめていた。





「一緒に暮らそう」





梅乃くんは本当に不思議な人だ──────────





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