ワケあり女子高生、イケメン生徒会と同居します。
* * *
「─────それで……本題って?」
朝食も食べ終わり、葉森くんはキッチンで食器を洗い、梓川くんは例のごとく読書。
そしてソファに座って何だかんだ仲良くテレビを見ている楓くんと林山くん。
そんな中、私はダイニングテーブルに突っ伏して眠そうにテレビを見つめる梅乃くんにずっと気になっていた質問を投げかけた。
美味しいご飯を食べながらも、その“本題”がずっと頭の隅に残って、気になって気になってしょうがなかったんだから。
一体何の話なんだろう……。
恐る恐る答えを待つ私に、梅乃くんはムクッと体を起こして、いつもの如く真っ直ぐにジーッと私の目を見つめ返した。
「一緒に暮らそう」
「…………」
……え?
これまた端的で唐突な発言に私は瞬きを繰り返す。
一緒に……暮らす?
え、一緒に暮らすって、“一緒に暮らす”ってことだよね??
理解が追いつかず、私の頭の中は軽いパニック状態。
なのに、私が瞬きをしながら首を傾げようと、梅乃くんは例のごとく多くを語らない。
「えっと……え?? 一緒に?」
「ん」
「こ、ここで?」
「ん」
なんとか捻り出した言葉もあっさりと肯定。
しかもその真っ直ぐな瞳は、冗談を言っているようには見えない。
「でも、ここって男子寮でしょ? そもそも私は住めない……よね?」
そうだよ。
この5人が住んでるってことは男子寮なわけで、女子の私がここに住むのはそもそも無理な話だよね?
「ここはね! 男子寮じゃなくて“特別寮”ってゆーんだよ!」
元気な声に後ろを振り返れば、ソファの背もたれから身を乗り出してニコニコ笑顔を浮かべている林山くん。
「特別寮?」
いやいやますます分からない!
何がどう違うの!?
どんどん頭の中が“?”で埋め尽くされる。
「生徒会専用の寮だよ。一応5人とも生徒会だからね」
キッチンで食器を洗い終えた葉森くんが、ゆっくりとダイニングチェアに腰掛けながら説明してくれた。
「だったら、なおさら私は住めないよね? 生徒会じゃないし」
それに何より、男の子とひとつ屋根の下で暮らすなんて考えられない。
いくら優しいからって、一緒に住むのはまた話が別で……。
「でも……女子寮には入れない」
「っ!!」
な、なんでそのこと……。
私はキュッと口を結んで梅乃くんを見つめた。
「ごめんね。俺たちのせいだよね」
苦笑いをしながら私に切ない眼差しを向ける葉森くん。
「いや、机移動させた凛音が元凶だろ」
「うぅ……だって恋々愛ちゃんと仲良くなりたかったんだもん」
楓くんの言葉にしゅんとなりながら目が潤んでいる林山くん。
あぁ、みんなにこんな顔させて……。
「違うよ……みんなのせいじゃない」
私がみんなと一緒に過ごすことを選んだのだから。
みんなが責任を感じることじゃない……。
「恋々愛」
「…………」
優しくて心地いい声にそっと顔をあげれば梅乃くんの瞳と目が合う。
「恋々愛が男が苦手なことは分かってる」
……え?
「なんで、そのこと……」
私、みんなにそのことは言ってなかったはず……。
「見てれば分かるだろ。分からずにどこ行くのも誘って、めげずに話しかけまくるのは凛音ぐらいだ」
「僕も気づいたよ! ……放課後には」
……嘘。
葵くんだけじゃなく、みんなにもバレてたなんて。
うまく誤魔化してるつもりで、私、何も隠せてなかった。
私の心の中は、動揺とやるせなさでいっぱいいっぱい。
「男だらけの寮で恋々愛が不安に思ってるのも分かってる。その上で、絶対恋々愛の嫌がることはしないって約束するから」
優しくて真っ直ぐな瞳に、目が離せなくなる。
男の子と暮らすなんて、ありえない。
……そう思うのに、梅乃くんの言葉になぜか大丈夫なんじゃないかって思える。
昨日会ったばかりなのに、不思議と信頼できる……。
「一緒に暮らそう」
梅乃くん……。
この言葉を聞いたのは、これで3回目。
昨日のこと、今しっかりと思い出した──────────
「一緒に暮らそう」
梅乃くんは真っ直ぐに私を見据えた。
「えっ……?」
私は突然投げかけられた言葉がうまくのみこめなくて。
……でも、不思議と嫌な感じはしなかった。
私を温かく包むブレザーに。
梅乃くんの優しい声に。
真っ直ぐな瞳に……。
私の心は満たされたから──────────
……ほんとに梅乃くんは不思議な人。
「……うん」
私はそう答えずにはいられなかった。
こう答えたら梅乃くんは──────────
「ん」
こうやって笑ってくれると思ったから。
ードクンッ。
梅乃くんの瞳が柔らかくなって、少し口角が上がる。
満面の笑みとまではいかないけど、いつもポーカーフェイスの梅乃くんにしたら、この微笑みだけでも最上級で……。
私はその微笑みに胸が高鳴って、目が逸らせなかった。
なんでこんな気持ちになったのか、自分でも分からない。
ただただ素直に、梅乃くんの喜ぶ顔が見たかった。
なんなんだろう……?
昨日からずっと、梅乃くんに対して初めてで不思議な感覚ばっかり。
でも嫌な感情とかは欠片もなくて、むしろフワッとした感じ。
その感じがまた心地よくて。
「やったあ!! 恋々愛ちゃんと一緒ー!!」
「凛音うっせぇよ! テレビの声が聞こえねぇだろ」
「うるさい……」
「恋々愛ちゃんが来ると、もっと楽しくなりそうだね」
………………。
……私、さらっと“うん”とか言っちゃったけど、一緒に暮らすってことはこの5人とずっと一緒ってことなんだよね。
私は手を挙げて大喜びの林山くんを見ながら苦笑いをこらえて頑張って笑ってみせる。
私の高校生活、一体どうなるんだろう……──────────?
「─────それで……本題って?」
朝食も食べ終わり、葉森くんはキッチンで食器を洗い、梓川くんは例のごとく読書。
そしてソファに座って何だかんだ仲良くテレビを見ている楓くんと林山くん。
そんな中、私はダイニングテーブルに突っ伏して眠そうにテレビを見つめる梅乃くんにずっと気になっていた質問を投げかけた。
美味しいご飯を食べながらも、その“本題”がずっと頭の隅に残って、気になって気になってしょうがなかったんだから。
一体何の話なんだろう……。
恐る恐る答えを待つ私に、梅乃くんはムクッと体を起こして、いつもの如く真っ直ぐにジーッと私の目を見つめ返した。
「一緒に暮らそう」
「…………」
……え?
これまた端的で唐突な発言に私は瞬きを繰り返す。
一緒に……暮らす?
え、一緒に暮らすって、“一緒に暮らす”ってことだよね??
理解が追いつかず、私の頭の中は軽いパニック状態。
なのに、私が瞬きをしながら首を傾げようと、梅乃くんは例のごとく多くを語らない。
「えっと……え?? 一緒に?」
「ん」
「こ、ここで?」
「ん」
なんとか捻り出した言葉もあっさりと肯定。
しかもその真っ直ぐな瞳は、冗談を言っているようには見えない。
「でも、ここって男子寮でしょ? そもそも私は住めない……よね?」
そうだよ。
この5人が住んでるってことは男子寮なわけで、女子の私がここに住むのはそもそも無理な話だよね?
「ここはね! 男子寮じゃなくて“特別寮”ってゆーんだよ!」
元気な声に後ろを振り返れば、ソファの背もたれから身を乗り出してニコニコ笑顔を浮かべている林山くん。
「特別寮?」
いやいやますます分からない!
何がどう違うの!?
どんどん頭の中が“?”で埋め尽くされる。
「生徒会専用の寮だよ。一応5人とも生徒会だからね」
キッチンで食器を洗い終えた葉森くんが、ゆっくりとダイニングチェアに腰掛けながら説明してくれた。
「だったら、なおさら私は住めないよね? 生徒会じゃないし」
それに何より、男の子とひとつ屋根の下で暮らすなんて考えられない。
いくら優しいからって、一緒に住むのはまた話が別で……。
「でも……女子寮には入れない」
「っ!!」
な、なんでそのこと……。
私はキュッと口を結んで梅乃くんを見つめた。
「ごめんね。俺たちのせいだよね」
苦笑いをしながら私に切ない眼差しを向ける葉森くん。
「いや、机移動させた凛音が元凶だろ」
「うぅ……だって恋々愛ちゃんと仲良くなりたかったんだもん」
楓くんの言葉にしゅんとなりながら目が潤んでいる林山くん。
あぁ、みんなにこんな顔させて……。
「違うよ……みんなのせいじゃない」
私がみんなと一緒に過ごすことを選んだのだから。
みんなが責任を感じることじゃない……。
「恋々愛」
「…………」
優しくて心地いい声にそっと顔をあげれば梅乃くんの瞳と目が合う。
「恋々愛が男が苦手なことは分かってる」
……え?
「なんで、そのこと……」
私、みんなにそのことは言ってなかったはず……。
「見てれば分かるだろ。分からずにどこ行くのも誘って、めげずに話しかけまくるのは凛音ぐらいだ」
「僕も気づいたよ! ……放課後には」
……嘘。
葵くんだけじゃなく、みんなにもバレてたなんて。
うまく誤魔化してるつもりで、私、何も隠せてなかった。
私の心の中は、動揺とやるせなさでいっぱいいっぱい。
「男だらけの寮で恋々愛が不安に思ってるのも分かってる。その上で、絶対恋々愛の嫌がることはしないって約束するから」
優しくて真っ直ぐな瞳に、目が離せなくなる。
男の子と暮らすなんて、ありえない。
……そう思うのに、梅乃くんの言葉になぜか大丈夫なんじゃないかって思える。
昨日会ったばかりなのに、不思議と信頼できる……。
「一緒に暮らそう」
梅乃くん……。
この言葉を聞いたのは、これで3回目。
昨日のこと、今しっかりと思い出した──────────
「一緒に暮らそう」
梅乃くんは真っ直ぐに私を見据えた。
「えっ……?」
私は突然投げかけられた言葉がうまくのみこめなくて。
……でも、不思議と嫌な感じはしなかった。
私を温かく包むブレザーに。
梅乃くんの優しい声に。
真っ直ぐな瞳に……。
私の心は満たされたから──────────
……ほんとに梅乃くんは不思議な人。
「……うん」
私はそう答えずにはいられなかった。
こう答えたら梅乃くんは──────────
「ん」
こうやって笑ってくれると思ったから。
ードクンッ。
梅乃くんの瞳が柔らかくなって、少し口角が上がる。
満面の笑みとまではいかないけど、いつもポーカーフェイスの梅乃くんにしたら、この微笑みだけでも最上級で……。
私はその微笑みに胸が高鳴って、目が逸らせなかった。
なんでこんな気持ちになったのか、自分でも分からない。
ただただ素直に、梅乃くんの喜ぶ顔が見たかった。
なんなんだろう……?
昨日からずっと、梅乃くんに対して初めてで不思議な感覚ばっかり。
でも嫌な感情とかは欠片もなくて、むしろフワッとした感じ。
その感じがまた心地よくて。
「やったあ!! 恋々愛ちゃんと一緒ー!!」
「凛音うっせぇよ! テレビの声が聞こえねぇだろ」
「うるさい……」
「恋々愛ちゃんが来ると、もっと楽しくなりそうだね」
………………。
……私、さらっと“うん”とか言っちゃったけど、一緒に暮らすってことはこの5人とずっと一緒ってことなんだよね。
私は手を挙げて大喜びの林山くんを見ながら苦笑いをこらえて頑張って笑ってみせる。
私の高校生活、一体どうなるんだろう……──────────?