ワケあり女子高生、イケメン生徒会と同居します。
「明日は、優羅の18歳の誕生日。……18歳って、結婚が出来る年でしょ?」

「……っ!! おい、それってまさか!」

楓くんは即座にお姉さんが言わんとすることを理解したようだった。

それを言及しないみんなもなんとなく理解したんだと思う。

“結婚”って……あの結婚だよね!?

18歳になってすぐ結婚なんて。

私は予想もしていなかった展開に開いた口が塞がらない。

それに、すごくおめでたい話なのになぜかドアの向こうの空気は未だに重たいまま。

「相手は?」

リビングに流れた重い沈黙を破ったのは葉森くん。

月武(つきたけ)ホールディングスのお嬢さんよ」

!!!!!

月武ホールディングス!?

それってあの大企業の!?

梅乃くん、そんなところのお嬢さんが彼女だなんて……すごすぎる。

それに、そんな彼女がいるってことは、梅乃くんもどこかの御曹司なんじゃ……?

「優羅はその人と面識があるのか?」

……え?

面識??

梓川くん、何言って──────────

「明日が初めての顔合わせよ」

…………。

え?

お姉さんが言いづらそうに答えた言葉に、私は耳を疑った。

明日が……“初めて”?

どういうこと? 彼女じゃないの?

だって結婚って……じゃあこれは、俗に言う政略結婚ってこと!?

嘘……ほんとにそんなことがあるなんて。

……でも、それじゃあ梅乃くんの気持ちは?

「それで優羅はいいのか?」

核心をついた楓くんの一言に、みんなもシーンと静まり返る。

「……俺は──────────」

いままでずっと沈黙を貫いていた梅乃くん。

満を持して発せられた言葉にみんな息を呑んだ。

……だけど、その言葉の先を梅乃くんが紡ぐことはなくて。

さっきの声、真っ直ぐな梅乃くんらしくなかった……。

何かの狭間で葛藤しているような感じで。

「……諦められるのか?」

「…………」

「何年想い続けてきたんだよ」

楓くんの問いかけに再び沈黙が流れた。

想い続けてる……。

話の流れからして、好きな人……かな?

「…………」

政略結婚となると、梅乃くん自身の意思を通せないほど大きな話なのかもしれない。

だけど、好きな人もいて……。

“諦めなきゃいけない”と“諦められない”の間で葛藤してるのかな……。

「こんなの納得出来ないよ! どーしてゆーくんが諦めないといけないの? こんな悲しい終わり方、嫌だよ」

「凛音、その気持ちはみんな同じだ」

まるで自分のことのように落ち込む林山くんと、それをあやすような優しい声の葉森くん。

好きな人がいなくても政略結婚は嫌だろうに、好きな人がいたらもっと嫌だよね……。

「優羅、親父さんを説得しに行こう」

しっかりとした重みのある葉森くんの声。

「諦めるのはまだ早いだろ」

楓くんの力強く鼓舞する声……。

みんなが心の底から梅乃くんを助けようとする気持ちが痛いほど伝わってくる。

「……わかった」

ふぅと一息ついて、葛藤の末にそっと承諾した様子の梅乃くん。

その言葉にリビングの熱気は再び勢いを取り戻す。

「じゃあ決まりだねっ! ゆーちゃん今すぐ出発だー!」

いつの間にかリビングの雰囲気は、重苦しいものから解放されて、和やかな空気に変わっていた。

……なんか、いいな。

ここまで思い合える関係。

信頼し合ってるのがすごく伝わってくる。

私にもそんな友達がいれば──────────

「あれ、恋々愛ちゃん?」

「へ?」

……あ。

目の前にはリビングのドアからひょこっと顔を出した林山くん。

ど、どうしよう……これじゃ盗み聞きしてたのバレバレだ!

今更ドアを閉めても意味ないし、なんて言い訳をしたら……。

軽く冷や汗をかきながら頭をグルグルと回転させた、その時──────────

-バンッ!

「わわっ!」

!?

林山くんが顔を出してたドアが勢いよく開き、林山くんはその人に押しのけられて、勢いよく壁に激突……。

な、何!?

突然のことに体が縮こまってしまった私の目の前には茶髪ショートのキレイな女の人。

もしかして……いや、もしかしなくとも、この人が梅乃くんのお姉さん?

……確かによく見てみれば、梅乃くんに似てるような。

呑気にそんなことを考えていた私に対して、私を見るなり梅乃くんのお姉さんはどんどん目を丸くしていって──────────

「お、おんなのこーーーーー!?」





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