ワケあり女子高生、イケメン生徒会と同居します。
②美しき婚約者
♡恋々愛side♡
……なんでこんなことに。
ーガタンッ。
揺れる車内で私は気づかれないようにそっとため息をついた。
今、私は梅乃くん家の運転手さんが運転する車に乗っている。
私の隣には梅乃くんのお姉さん。
後ろには梅乃くんと梓川くん。
そのまた後ろには葉森くんと林山くんと楓くん。
はぁ……どうしよう──────────?
* * *
遡ること2時間前。
「お、おんなのこーーーーー!?」
-ビクッ。
お姉さんの華奢な体からは想像もしていなかったレベルの大声に、びくりと肩を揺らす私。
「ゆーちゃん! 恋々愛ちゃんびっくりしちゃってるよ!」
「あ、ごめんごめん……」
いつの間にか体勢を立て直していた林山くんに注意されて、お姉さんは慌てて口元を手で覆った。
そんなお姉さんの後ろからはゾロゾロと生徒会のみんながリビングから出てきていて。
「ちょうど明日は入学式で休みだからな。明日中にちゃっちゃとケリつけるぞ」
うーんっと大きく伸びをしてグルングルン肩を回す楓くん。
なんか、喧嘩にでも行くみたいだな……。
「涼、お前そんな簡単に言うなよなぁ」
呆れたようにため息をつきながら楓くんの後に続く葉森くん。
「絶対明日のディナーは豪勢だよね! 誕生日会♪ 誕生日会♪」
ー人だけ少し方向性がズレてる林山くん。
そして梓川くんもみんなの後について、玄関の方へ。
そうだ……みんな梅乃くんの実家に行くんだよね。
……じゃあ、私は特別寮でー人?
「恋々愛、行こう」
えっ?
みんながズラズラとリビングから出て、玄関に向かう様子をボーッと見ていた目を、声のした方に向ける。
梅乃くんは真っ直ぐなそのアーモンドアイで私をジーッと見つめていた。
「いや、でも……私お邪魔じゃ……」
梅乃くんのご家族と会ったことないし、第一、大事な説得場面に私が居るのって……。
「恋々愛は邪魔なんかじゃない」
相変わらずスパッと断言する梅乃くん。
「恋々愛の部屋は男と別の階に準備するし、もちろん恋々愛が嫌がることはしない。何より、そこら辺の男より強い姉ちゃんもいる」
梅乃くん……。
私、また気を遣わせちゃってる。
……やっぱり申し訳ないよな──────────
-ペシッ!
!!?
梅乃くんの誘いにどう答えようか一人あくせくしていると、目の前のふわふわの赤髪がペタンと潰される。
頭を叩かれたのに対して、表情を1ミリも変えない梅乃くんは、頭を抑えながら叩いた張本人を振り返った。
「誰が男より強いよ。失礼ね」
梅乃くんの視線の先には、腰に手を当てて仁王立ちのお姉さん。
さ、さすがお姉さん……。
身長差があって梅乃くんのほうが断然高いのに、違う意味、お姉さんの方が上だ。