ワケあり女子高生、イケメン生徒会と同居します。
佐藤(さとう)さん、恋々愛ちゃんを客室へお願いします」

「はい。では、こちらへ」

お姉さんのお願いに、お手伝いさんはニコッと笑顔で応えて私を客室へと促す。

対して私は初めてのことに緊張でカチコチ……。

すごいなぁ……。

梅乃くんって、ずっとこういう生活を送ってたんだ。

ふと、前を歩くふわふわ揺れる赤髪の方を見てみれば、梅乃くんは何をするにも全て手慣れた様子。

……ますます雲の上の人って感じがするなぁ。

「客室は2階ですのでこちらの階段から上がって頂きますね」

「あ、はい!」

私は豪邸の雰囲気に圧倒されながらも、階段を昇っていくお手伝いさんの後を遅れないようについて行く。

視界の端では、みんなが各々の客室へ案内されるところが見えた。

“恋々愛の部屋は男と別の階に準備するし、もちろん恋々愛が嫌がることはしない”

さっきの梅乃くんの言葉が蘇る。

ほんとに別の階にしてくれたんだ……。

* * *

「こちらが客室になります」

-ガチャ。

わぁ……!

今日何度目かの驚き。

ここに来てから驚くことばかりだ。

私はそっと部屋に足を踏み入れ、ぐるっと部屋を一望する。

「それではごゆっくり」

案内してくれたお手伝いさんはニコッと一礼すると、そっと客室を後にした。

薄ピンクの壁に清潔感のある白いベッド。

まるでお姫様の部屋のような造りに、子どものように気分が上がる。

こんな部屋に泊まることが出来るなんて……。

華奢なランプが部屋全体を明るく照らしていて、突き当たりには大きな窓。

私はもう眠さなんか吹っ飛んで、好奇心に突き動かされるまま、窓を思いっきり開けた。

-バンッ。

窓を開けた途端、春風がふわっと私の髪をなびかせた。

満天の星、その中でより一層輝いている満月。

こんな景色、都会でも見れるんだ……。

「「キレイ……」」

……え?

いま、誰かと声が重なったような……?

「あなたは……?」

消え入りそうな静かな声に、私は慌てて声のした方へと顔を向けた。

目を向けた先には、同い年ぐらいの女の子が私と同じように窓から体を乗り出していて。

ぱっちりした二重の目に、ぷるんとした唇。

スーッと通った鼻、サラサラの黒髪、透き通るような白い肌……。

まるでお人形さんみたいな可愛らしい人。
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