ワケあり女子高生、イケメン生徒会と同居します。
紅茶をテーブルに静かに置く雅さんに、私は両手と顔をブンブン振って食い気味に否定した。
私が梅乃くんの彼女だなんて不釣り合いすぎる!!
-ゴーン……ゴーン……。
-ビクッ。
何? いまの不気味な音……。
手をブンブン振っていると、突如、暗く低い音が廊下の方から響いてきた。
こ、怖すぎる……!
「ロビーの大きな掛時計ですよ。12時を回ったのでしょう」
あぁ、あの掛時計の……。
さっき通ってきたロビーに掛けてあった、印象的な大きな掛時計を思い出す。
雅さんの部屋に掛けられた時計を見ると、ほんとに12時を回っていた。
……梅乃くんの誕生日になったんだ。
「明日……いえ、もう今日ですね。夜に優羅さんの誕生日のお祝いと併せて、婚約の式典があるんですよ」
私の斜め前のソファに腰掛け、優雅に紅茶を混ぜながら、どこか寂しそうな目をしている雅さん。
そういえば、雅さんも梅乃くんと初対面なんだよね?
初めて会う人と結婚しなくちゃいけないなんて……。
梅乃くんと雅さんのことを思うと、ぎゅっと胸が締めつけられる。
……でも、生徒会のみんなが説得に成功できたら──────────
「私たち、その婚約を止めに来たんです」
私の言葉にピクっと反応した雅さんは、口を付けていたティーカップをそっとソーサーに戻した。
その顔はなんとも言えない複雑な表情で。
「“私たち”というか、私はおまけのようなものなんですけど……梅乃くんと幼なじみのみんなが、この婚約をやめさせようとここへ来たんです」
「やめさせようと……そうですか。やはり嫌ですよね、こんな結婚」
憂いを含んだ雅さんの苦笑い。
「雅さんは、嫌じゃないんですか? 初対面の人と結婚なんて……」
結婚は女の子の憧れなのに………大切なものなのに。
政略結婚だなんて。
「嫌じゃない……といえば嘘になりますけど、しょうがないことですから」
“しょうがない”……。
“……俺は──────────”
さっきの葛藤しながら放たれた梅乃くんの言葉が思わずフラッシュバックした。
雅さんは、もう諦めてるんだ……。
しょうがなくなんてないのに。
雅さんは儚く笑ったかと思うと、私の方へと優しい微笑みを向けた。
「恋々愛さんは好きな人、いらっしゃいますか?」
「えっ!?」
好きな人!?
「あ、私っ、好きな人とか、いなくて……」
「そうなんですか?」
「は、はい……」
昔はもちろんいたけど……。
ずっと見てても飽きなくて、一緒に過ごしたいなって思えた人。
告白して、付き合って……。
私もそんな甘い青春を送っていたんだけど──────────
思い出に意識を引きずられそうになって、私はハッと我に返る。
ダメダメ! 私、また思い出しちゃってる!
忘れるって決めたんだから……。
「私は……います」
静かなつぶやきに、私はそっと雅さんを見つめた。
雅さんの悲しげな声が数時間前の梅乃くんの声と重なる。
私が梅乃くんの彼女だなんて不釣り合いすぎる!!
-ゴーン……ゴーン……。
-ビクッ。
何? いまの不気味な音……。
手をブンブン振っていると、突如、暗く低い音が廊下の方から響いてきた。
こ、怖すぎる……!
「ロビーの大きな掛時計ですよ。12時を回ったのでしょう」
あぁ、あの掛時計の……。
さっき通ってきたロビーに掛けてあった、印象的な大きな掛時計を思い出す。
雅さんの部屋に掛けられた時計を見ると、ほんとに12時を回っていた。
……梅乃くんの誕生日になったんだ。
「明日……いえ、もう今日ですね。夜に優羅さんの誕生日のお祝いと併せて、婚約の式典があるんですよ」
私の斜め前のソファに腰掛け、優雅に紅茶を混ぜながら、どこか寂しそうな目をしている雅さん。
そういえば、雅さんも梅乃くんと初対面なんだよね?
初めて会う人と結婚しなくちゃいけないなんて……。
梅乃くんと雅さんのことを思うと、ぎゅっと胸が締めつけられる。
……でも、生徒会のみんなが説得に成功できたら──────────
「私たち、その婚約を止めに来たんです」
私の言葉にピクっと反応した雅さんは、口を付けていたティーカップをそっとソーサーに戻した。
その顔はなんとも言えない複雑な表情で。
「“私たち”というか、私はおまけのようなものなんですけど……梅乃くんと幼なじみのみんなが、この婚約をやめさせようとここへ来たんです」
「やめさせようと……そうですか。やはり嫌ですよね、こんな結婚」
憂いを含んだ雅さんの苦笑い。
「雅さんは、嫌じゃないんですか? 初対面の人と結婚なんて……」
結婚は女の子の憧れなのに………大切なものなのに。
政略結婚だなんて。
「嫌じゃない……といえば嘘になりますけど、しょうがないことですから」
“しょうがない”……。
“……俺は──────────”
さっきの葛藤しながら放たれた梅乃くんの言葉が思わずフラッシュバックした。
雅さんは、もう諦めてるんだ……。
しょうがなくなんてないのに。
雅さんは儚く笑ったかと思うと、私の方へと優しい微笑みを向けた。
「恋々愛さんは好きな人、いらっしゃいますか?」
「えっ!?」
好きな人!?
「あ、私っ、好きな人とか、いなくて……」
「そうなんですか?」
「は、はい……」
昔はもちろんいたけど……。
ずっと見てても飽きなくて、一緒に過ごしたいなって思えた人。
告白して、付き合って……。
私もそんな甘い青春を送っていたんだけど──────────
思い出に意識を引きずられそうになって、私はハッと我に返る。
ダメダメ! 私、また思い出しちゃってる!
忘れるって決めたんだから……。
「私は……います」
静かなつぶやきに、私はそっと雅さんを見つめた。
雅さんの悲しげな声が数時間前の梅乃くんの声と重なる。