ワケあり女子高生、イケメン生徒会と同居します。
お兄さんたちから離れ、人通りが少なくなったところで梓川くんはボソッとそう言った。

その言葉に、私は梓川くんの背中についていた手を下ろす。

「……っ! 桜川、どうして……」

私の方を振り返り、ハッとしたように目を見開く梓川くん。

“どうして”?

……それはこっちのセリフだよ。

「梓川くんはっ……どうして、何も言わないの?」

私はゆっくりと梓川くんの高い顔を見上げる。

「言わないと……声に出さないと、梓川くんの気持ち、お母さんに伝わらないよ」

寂しい目の原因は、きっとお母さんの態度。

目の前で気を遣うこともなく、まざまざと見せつけられる扱いの差だ。

……だけど、梓川くんは感情を表に出さないし、そのうえ口に出すこともない。
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