ワケあり女子高生、イケメン生徒会と同居します。
悲しい気持ちなのは梓川くんの方なのに。

「ごめん、なさい……」

「桜川」

ードクンッ。

いつもより低くて優しい梓川くんの声。

「……桜川の言う通り、俺は相手に自分の気持ちを伝えるのが苦手で、今まで何も言ってこなかった。母さんのあの態度も、その代償だと思ってる」

そっと顔から手を退()けると、梓川くんの瞳が私を真っ直ぐに見つめていた。

だけど、その瞳にはさっきの寂しそうな色はなくて。

「だから、行動で示すって決めたんだ。俺にとって、行動は言葉よりも伝えやすいから」

行……動?

私は梓川くんの言葉に静かに耳を傾ける。

「大学を卒業したら、俺は兄貴と同じ、グランドシステムズに入りたいと思ってる。そのために、まずはITについてしっかりと学ぶんだ」
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