ワケあり女子高生、イケメン生徒会と同居します。

②隣の風紀委員






♡恋々愛side♡

「はぁ……」

私は全く開く気配のない扉にぐたぁっともたれかかる。

シンと静まり返った廊下に、私のため息だけが妙に響いた。

どうしよう……?

* * *

遡ること数十分前。

「それじゃあ終わります。楓くん」

「きりーつ、礼」

「「「「「ありがとうございました」」」」」

昼休みになり、一気にザワつきだす教室。

みんなが鞄やコンビニの袋を持って移動し始めたのを見計らい、私も急いで鞄を肩にかける。

早くこの場を離れなくては!

「恋々愛ちゃん! 一緒にご飯食べ──────────あれ? 恋々愛ちゃんは?」

「いま急いで教室出て行ったよ。何か用事でもあるのかな?」

林山くんと葉森くんがそんな会話をしている頃には、私は教室を飛び出して廊下を小走りに歩いていた。

ふぅ……これでひとまず安心。

鞄を抱え直しながら、私は今日のできごとを一通り思い返す。

始業式のために体育館に行くのも、休み時間も、移動教室も……。

朝からずーっと林山くんたち(あの5人)と一緒だった。

私、完全に悪目立ちしてるよ。

しかも男の子とずっと一緒にいたせいか、変に緊張して少し具合も悪い。

……少なからず、女の子の視線を気にして気が気じゃなかったのも一因だと思うけど。

だからお昼ご飯だけはゆっくり食べたい。

昼休みになったら、林山くんたちに捕まる前に教室から出ようと決めていた。

ちゃんと抜け出せてよかった……。

「ふぅ……って、あれ?」

安堵のため息をつきながら、ふと周囲を確認すると、静まり返った廊下には私一人。

ここ、どこだろう……?

ボーッと回想してたらよく分からないところに来てしまった。

そういえば、離れることに必死で、どこでご飯食べるか考えてなかったな……。

しかも、ボーッと歩いていたうえに方向音痴な私は、どうやってここまで来たのかも、教室に帰る道も分からない。

ここは……。

廊下にズラリと並ぶ扉の上のプレートを見る限り、ここは特別教室ばかりが並ぶ別館のよう。

別館なら人もいなさそうだし、この辺の空き教室で食べようかな?

私は試しに手前の扉を軽くノックして、ドアノブに手をかける。

……しかし──────────

-ガコンッ。

……開かない。

その隣の部屋も。

-ガコンッ……。

その隣も……。

-ガコンッ……ガコンッ。

開かない!!

「はぁ……」

私は全く開く気配のない扉にぐたぁっともたれかかる。

シンと静まり返った廊下に、私のため息だけが妙に響いた。
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