ワケあり女子高生、イケメン生徒会と同居します。
あれだけ鈍い音がしたのに林山くんはビクともしてないし。

そしてその頭突きが引き金となって、再び二人の言い合いが始まってしまった。

しかもさっきより騒がしさが増してる。

周りからの視線もすごいし……。

もう何が何だか──────────

「涼、凛音、うるさい」

-ピタッ。

……?

有無を言わせない威圧感のある低い声に制された楓くんと林山くん。

さっきまでの嵐のような応酬が嘘のようにピタッと止まった。

す、すごい……。

私は楓くんたちと同じく、ゆっくりと声の主へ目を移す。

二人を注意したのは、私の隣の席の黒髪男子。

座っていても分かるほど、みんなより身体が一回り大きくて、手足もスラッと長い彼。

そんな体の大きさも相まって、何もしなくても圧を感じて……。

私は注意されていないのに、勝手に背筋が伸びる……。

「なおくん、ごめんね?」

そんな圧に微塵も動じていない林山くんは、小首をかしげながら可愛く謝罪。

なおくん……。

ふと机の横においてある部活用であろう大きなバッグに視線を落とすと、キレイな字で書かれた『梓川(あずさがわ)奈雄輝(なおき)』という名前を見つけた。

梓川くん、か……。

彫刻みたいにキレイなラインの横顔に、手元の文庫本を黙々と読む切れ長の伏せられた瞳。

「なおくんはね、いっつもこんな感じでツンデレなんだよ!」

梓川くんのスルーはいつものことなのか、全くへこたれてない林山くんは、頬杖をつきながらニコニコ笑顔で私にそう言った。

“こんな感じでツンデレ”って……いまのところツンしかなかったような……。

「あれ? そーいえばゆーくんは? また寝てるの??」

ハッと何かを思い出したかのような林山くんは、私の机に頬杖をついたまま私を()けるように体を曲げて私の後ろの席へと視線を送る。
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