ワケあり女子高生、イケメン生徒会と同居します。

③人気の生徒会






♡恋々愛side♡

ーゴロゴロゴロゴロ……。

「ふぅ……」

春とはいえ、これだけ晴れた日に外を歩いていると、地味に汗が滲んでくる。

私はスマホ片手にキャリーバッグを転がして閑静な住宅街を歩いていた。

ナビに案内されて向かう先は女子寮。

葉森くんに“女子寮から通うつもり”と言いながら、まだ入寮手続きすら出来てない。

本当なら学校が始まる前に入寮手続きを済ませてる予定だったんだけど……。

思い出すのは、ホテル暮らしを始めた一週間前。

ホテルに一週間も滞在できることが嬉しくてホテル生活を満喫していた私。

入寮手続きもしないといけないと分かってはいたものの、なかなかホテルを出る気になれず。

教頭先生が即日入寮もできるって言ってたから、まだ大丈夫、まだ大丈夫……と先延ばしにしていた結果がコレだ。

女子寮は3つあるって言ってたし、さすがに1部屋ぐらいは空きがあるよね?

「あっ……ここだ」

そうこうしている間に、いつの間にか1軒目の女子寮に到着していた。

表札に『羅桜高校 第一女子寮』と書かれた大きな建物。

たしかここが一番部屋数が多いんだっけ。

ここなら空き部屋もありそう!

私はキャリーバッグを持ち上げ、玄関まで小走りに向かう。

ーピンポーン。

確か寮母さんがいるはずだから、手続きは寮母さんにしてもらうんだよね。

チャイムを押してから十数秒後、目の前のドアがガチャと開いた。

「はーい」

中から出てきたのは同じ制服を着た女の子。

リボンの色からするに2年生みたい。

「こんにちは。羅桜高校3年の桜川です。入寮の手続きをしに来ました」

「あっ、どうぞ! えっと……ここで待っててください!」

そう言って女の子はドアを全開にすると、私を玄関へ促した。

ふぅ……。

私はキャリーバッグをゆっくりとおろして、息を整える。

さっきの子、奥の方に行ったみたいだけど、寮母さんを呼んできてくれるのかな?

即入寮できるとは言われたものの、不安だなぁ……。

「待たせてごめんねー!」

奥の方からパタパタと駆けてくる足音に、私はくるりと振り向いた。

……あれ?

奥の方からさっきの女の子と一緒に出てきたのは、制服姿の3年生。

その人は申し訳なさそうに眉根を寄せながら、顔の前で手を合わせた。

「本当に申し訳ないんだけど、もうこの寮空きが無いんだよね」

「えっ……」

空きがないって……嘘!?

さっきの2年生の子も申し訳なさそうに俯いている。

一番大きい女子寮なのに、もう埋まっちゃってるの?

「そっ、か……ありがとう」

私は頑張って笑顔を取り繕って頭を下げた。

部屋が埋まってるなら仕方がない。

それに、元はと言えば動きが遅かった私が悪いんだし……。

ーバタンッ。

私は寮を出て、再びゴロゴロとキャリーバッグを転がしながらナビを再起動。

あの寮、一番学校から近いから人気なんだろうなぁ。

「はぁ……」

残り2つの寮も空きがなかったら、私は今日どうやって夜を過ごせば……。

まさか寮に空きがなくなるなんて思ってもみなかっただけに、私の頭の中はノープラン。

残りの寮に賭けるしか──────────
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