桜が舞い、君に出逢う。
「じゃあ、私帰るね。」

「あぁ、送っていくよ。」

「...ありがとう。」

もう時間は8時になっていて、

確かにこの時間に一人は危険だと

言葉に甘える。

「音瀬那由多、ありがとう。」

家まで送ってもらい、その礼を告げると

音瀬那由多は顔を赤らめ恥ずかしそうに

モジモジと何かを言おうとしていた。

「何?」

そう聞くと弾かれたように私の顔を見て、

口を開いた。

「お、俺のこと、那由多でいいから!じゃ、また明日!」

爆発寸前みたいに顔を真っ赤にして、

言い逃げをしていった。

(つまり、音瀬那由多じゃなくて那由多でいいからってこと?)

普通に言えばいいのにと思いながら

ふっと鼻で笑った。

...あぁ、ちゃんと笑えてた。

ありがとう、那由多。
< 229 / 300 >

この作品をシェア

pagetop