桜が舞い、君に出逢う。

弾き終わった時、那由多は不安そうな顔を

私に向けた。

「ありがとう、一緒に弾いてくれて。とても楽しかったわ。それに、那由多の音も、聞いていて心地よかった。」

「はぁ、良かったぁ。」

「どうして？私は那由多の音が好きだって言ってるじゃない。」

「だ、だって！希空性格がすごく変わったから...感性も変わっちゃったかと思って」

「感性は変わらないよ。それに、性格を変えた訳でもないの。ただ思っていないことを言っているだけ。」

「ん、え、えぇ！？思ってないことを言ってるの！？」

「えぇ。頭の悪い生徒が自分が思った回答と逆の回答をすれば点数が高かった、ってあるでしょう？それと同じ。自分を出すことが苦手な人間が、思っていること感じていることと真逆なことをすると、案外上手くいくの」

「だ、ダメだよ！自分の思っていないことをするなんて！」

那由多の言っていることに、首を傾げる。