桜が舞い、君に出逢う。
突然、蓮くんは私の頭を撫でながら、愛おしいものを見るような目で、私を見つめた。

それでも何だか、その視線の先に私は写っていないような気がした。

なんだかそれが嫌で、蓮くんに話を振る。

(蓮くん!)

「っ、な、に?」

(私はもう大丈夫だから、先生を呼んできてくれない?)

「あ、うん。ちょっと待ってて。」

椅子から立ち上がった蓮くんは、パタパタと走って先生を呼びに行った。

誰のことを考えていたのか、なんて知ってる

蓮くんの、亡くなってしまった妹さん。

雨攫小鳥ちゃん。私と1歳違いで、お姉ちゃんっていつも笑いかけてくれた。

蓮くんとよく似ていて、茶髪のミディアムに優しい瞳。大好きだった小鳥ちゃんは、ある日交通事故で亡くなった。

その場に居合わせなかった私は、その話を聞いて泣き崩れた。

私の話を笑顔で聞いてくれた小鳥ちゃんは、もういないんだと。

あれ、私の話?その時はまだ、声が出ていた時だったっけ。

失声症は、ストレスや心的外傷の心因性が原因でかかってしまうもの。

蓮くんの件でストレスを感じていた私は、小鳥ちゃんの一件でさらに心に傷を負ってしまい、声が出なくなってしまった。
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