桜が舞い、君に出逢う。
顔を俯かせると、いつの間にか戻ってきていた蓮くんが私の顔を心配そうに覗き込む。

「つむ、顔色悪いよ。もう少し休んでく?」

その問いかけに、ふるふると首を振る。

何を考えていたかなんて、絶対に言えない。

「あら、結城さんもう大丈夫なの?それなら授業に戻っていいわよ〜」

保健室の先生が笑いかけてくれて、何だかほっとした。

「それじゃ、行こうか。」

蓮くんは私の手と背中を支えて立つのを手伝ってくれた。

こういう気遣いができる蓮くんが、大好き。

だけど、蓮くんが私に向ける感情はあくまでも妹。

だから私も、大好きなお兄ちゃんだと自分に言い聞かせている。

「送ってくよ。」

(ありがとう。)

にこりと笑うと、それにつられたのか蓮くんも笑ってくれた。

教室に入ると、授業中にも関わらず一気にざわめきが広がった。

(あの二人、どうなったのかな。)

席に座ると先生が心配してくれて、微笑みながら大丈夫だと頷いた。

授業が終わると、紙に『助けてくれてありがとう』と書いて、鏑木くんの席まで歩く。

紙を差し出すと、驚いた顔をした鏑木くんは目を細めてくしゃっと笑った。

「いや全然。逆に先輩呼びに行くことしか出来なくてごめんな。」

なんて謝ってくれた。

それでも助けてくれたことに変わりない、と首を横に振ると、後ろから罵倒の声が聞こえた。

「結城さん、先輩だけじゃなくて湊くんにも手出してるよ。」

「うわ、そこにも色目使うの?やばっ」

「さっき倒れたのだって実は演技だったりしてね。」

「それはないわ〜」

なんて、笑いあってる。

湊くん、鏑木湊。

黒い短髪に、笑うと細められる瞳。黒い眼鏡

確かに、好青年の部類なんだと思う。

それならこれ以上ここにいたらもっと酷いことを言われる。

もう一度ペコッと頭を下げて、自分の席に戻った。

「...今度はちゃんと、助けるから。」

通り際に聞こえた声はあまり気も小さくて、

私の耳ではなんと言ったのか聞こえなかった
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