桜が舞い、君に出逢う。
正直、あんなに優しい蓮くんがどうして動物に唸られるのかが分からない。

「あ、つむちゃん!おかえり〜」

玄関で靴を脱ぐと、花陽ちゃんが出迎えてくれた。

ただいまと言う意味を込めてペコッとお辞儀をする。

「そういえばつむちゃん、今日大丈夫だった?」

今日っていうのは、私が頭をぶつけて倒れちゃったことかな。

心配をかけたくなくて首を縦に振ると、
花陽ちゃんはちょっと怖い顔をした。

「つむちゃん、大丈夫じゃないから倒れたんだよ」

ほんの少しだけ気迫のある表情で、花陽ちゃんは私を抱きしめ頭を撫でた。

「つむちゃん、私たちに心配かけたくないって思ってくれてるのはすっごい嬉しいけど、無理しちゃうのはダメだよ?」

花陽ちゃんの表情から、心配してるのが見て伝わる。

(ごめんなさい。)

心配してくれたのに、申し訳ないことをした

「わかったら、もうしちゃダメだよ!」

花陽ちゃんは私の目を見てしっかりと伝えた。

(本当に、いいお姉ちゃんだなぁ。)

「それにね、」

1度言葉を切って、花陽ちゃんは私の耳に口元を寄せた。

「私なんかより花恋ちゃんが怒った方がもっと怖いんだからね!」

(!)

怒った顔の花恋ちゃんを思い出してキュッとスカートの裾を握る。

怖い、花恋ちゃんは本当に怖い。

花陽ちゃんと離れて、自分の部屋に戻ろうと階段を上がると廊下で花恋ちゃんと出くわした。

(!!!)

ビックリして早く部屋に入ろうと思ったのに

「あら、紬。もう帰ってたの?」

話しかけられてドキリとする。

引きつった笑顔で頷く。

「そういえば今日あなたのクラスが騒がしかったようだけど、何かあった?」

ここで何もないって言ったら花陽ちゃんに怒られちゃうよね。

紙に書こうとしてメモ帳とペンを探すと、

「あ、探さなくていいわ。私の部屋で少しお話しましょ。」

(お話?ってなんだろ。)
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