桜が舞い、君に出逢う。
その一心で階段を駆け下りて、私は美緒ちゃんの前に立った。

「美緒ちゃ……くない!…のは、…だから!」

精一杯に叫んだ。

そして

「「え!?」」

その場にいた全員が驚きを隠せなかった。

「つ、つつつつつつつむちゃん!?しゃ、しゃしゃしゃしゃ」

「花陽、1回落ち着きなさい。」

明らかに驚きすぎな花陽ちゃんを花恋ちゃんがなだめて、花恋ちゃんは私に近寄った。

「紬、喉は痛くない?急に喋れたのだから、無理はしないで。」

その言葉に必死で頷く。

「…紬」

そう言って希空ちゃんが水の入ったコップを差し出してくれた。

「あ…りが、…っ、ゲホッゲホッ」

喉に何かが詰まるのを感じて、急にむせる。

すぐに希空ちゃんが背中を撫でてくれて少し楽になる。

咳が収まると水を飲む。

「急に話すと声帯に無理がかかる。あまり長文を話さないで「はい」か「いいえ」で答えて。」

「わか…た」

それからすぐに希空ちゃんは部屋に戻った。

ようやく涙が止まったらしい美緒ちゃんが私に駆け寄る。

「ごめん、紬。ほんとにごめん!」

「違う…私が…悪い」

きちんと話せないのがもどかしい。
美緒ちゃんは悪くないよって、ちゃんと言いたいのに!

「紬」

階段から降りてきた希空ちゃんが、振り向いた私の口に何かを入れた。

「!?!?」

「これ、自家製ののど飴。」

「…のど飴?」

明らかにのど飴じゃない味してるけど…
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