桜が舞い、君に出逢う。
「ねぇ花陽。雲龍のどこが好きなの?」

唐突に聞かれた質問で、

あたしはキョトンとするけど大和君の

好きなところを答えていく。

「まず、笑った顔でしょ?無表情も好きだし、眉をひそめた顔も好き。それと優しいんだよ、ヤクザっぽい口の悪い所も、普段のぼけーっとした所も。全部好き。」

「そこまで…か。」

美緒ちゃんはポツリと呟く。

「私、花陽が前ヤクザに絡まれて、雲龍に助けてもらったから雲龍のことが好きなんだと思ってた。」

「んなっ!そんなことないよ!」

それって産まれたてのヒヨコが初めて

見たものを親と思うやつ…じゃないし、

なんだっけ。でも、そんなやつでしょ!?

「うん。今聞いてそう思った。助けてもらったことで好きになったなら、絶対にやめてもらおうと思った。私のことを嫌いになったとしても。」

「ど、どうして?」

「だって、雲龍の家はヤクザだもん。」

美緒ちゃんは、何故か

悲しそうな顔でそう言った。

「そんな理由で?」

重々しく、美緒ちゃんは頷く。

「そんな理由だからだよ。ただの、普通の家ならいいの。親から許可をもらえれば。でもさ、私たちは結城家という家に生まれた、
世間に影響をもたらすことが出来る家なんだよ。そんな家が、ヤクザなんて家と結婚できないんだよ。」

「そんな!」

じゃあ、あたしは大和君と結婚どころか

付き合うことも出来ないってこと!?

「花恋のお父さんは政治家でしょ?だから、本来ならヤクザとなんて付き合えるわけない。けど…」

「けど?」

「お母さんの頑固さを生まれ持った花陽なら、大丈夫なのかもね。」

美緒ちゃんは嬉しそうに笑った。

「花陽がちゃんと雲龍を好きになってよかった。話はそれだけだから、また風邪ぶり返さないように早く寝な?」

美緒ちゃんは優しい口調でそう言うと、

あたしの頭をポンッと撫でた。

「美緒ちゃんホントにあたしの妹?」

「どうしたの急に」

そう言って笑った美緒ちゃんは

可愛かったけど、そうじゃなくて、

「あたしの方がお姉ちゃんなのに、妹が妹らしくなくて悲しい。」

「なんだそれ」

そう言いながら美緒ちゃんは

あたしの背中を押した。

「おやすみ、おねーちゃん。」

パタン。と扉は閉められて、あたしは

誰もいない廊下に立ちつくす。

(ひっさしぶりに美緒ちゃんにお姉ちゃんって呼ばれたっ!!嬉しい!ありがとう美緒ちゃん!)
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