御曹司の極上愛〜偶然と必然の出逢い〜
 薄暗い落ち着いたバーのカウンターの片隅。


 ひとりで静かに涙を流し続けたが誰にも気づかれなかった。はず……。


 大好きな両親とのたくさんの思い出に浸り、ついつい飲み過ぎてしまった。


 いつからか、隣に男性が座った気がする……。


 けれど、金曜の夜の店内は賑わっていた。特に隣の席に座った人に意識を向ける事もなく、ただひたすら哀しみを紛らわすために、いつもより飲んだ自覚はある。


 よく考えたら、他にもカウンターの席は空いていた気がする。


 じゃあ、あの時隣に座った男性が一夜の相手?


 横顔だがどこかで見た事のある人だったような……。

 ただ、既に飲み過ぎていた……。

 顔よりもオーラを感じた気がする……。

 何もかもが曖昧で確証はない。


 広いホテルの部屋には、人の気配はない。





< 4 / 131 >

この作品をシェア

pagetop