俺のボディガードは陰陽師。〜第六幕・相の証明〜
「……」
互いに一ミリたりとも動かず、しばらく睨み合う。
警戒し合い、互いの一手を読み合っている。
「ぷっ……」
だが、沈黙に耐えられなくなったのか、先に笑い出したのは、このクソヤローだ。
「あははっ……あはははっ!」
「……」
「早く……」
次第に腹を抱えて体を捩らせて笑う、その不気味な様を黙って見守るカタチとなってしまっていた。
「……早く、殺しに来いよ」
そう告げる冷たく低い声は、軽く笑っていた人物の声とは思えない。
その一言と同時に、渦巻いた突風がゴォッ!と立ち昇る。
突風に当てられ、反射で咄嗟に顔を伏せてしまった。
しまった…と、顔を上げた時には、もう風は止んでいて。
そこに居たはずのクソヤローの姿はもう無かった。
いったい、何をしに来たんだ。
放って置かれてると思って、寂しくなったか?かまって欲しがる気色の悪い男だからな?
「……言われなくたって、殺しに行くからな」
殺気が治まるまで、そこに立ち尽くしたままでいた。
一息吐いて、呼吸を落ち着けたのち、再びタクシーを探す。
感情を抑えるのをやめたら、やる事はもうひとつしかない。
肩にかけたクーラーボックスの紐を、きつく握り締めた。