俺のボディガードは陰陽師。〜第六幕・相の証明〜
向けられた背に手を伸ばしたが、届かず。
まるでこの手をすり抜けるかのように、なずなは駆け出して行ってしまう。
最後に、一言を残して。
「……ごめん」
手は空を切り。
なずなは階段を駆け足で降りて行き、もう姿はなかった。
追いかけるまで思考が追いつかなかった俺は、その場に呆然と立ち尽くす。
追いかけることが出来ずに、心が立ち止まってしまったのだ。
なずなは、行ってしまった…。
(そんな……)
俺は……間違っていたのか?
……いや、間違いではない。
遅かったのだ、何もかも。
まさか、この日が。
復讐するこの機会が、こんなにも早く訪れるなんて。
今更こんなことを言っても遅いけど、昨日の話をもっと早いうちにしておけば、俺の判断は間違いではなかった。
なずなを思い止まらせることが出来たかもしれない。
(……思い止まらせる?)
……ここで、ようやく自分の思いにも気付く。
俺は、こんなこと…復讐なんて、なずなにして欲しくなかった。
本当はそう言いたかった。
でも、言えなかった。
本当は、俺も……遠慮していたんだ。