俺のボディガードは陰陽師。〜第六幕・相の証明〜
ハッとして顔を上げると、その声と同じく、剣軌は微笑んでいた。
こう、微笑みかけられるのはいつぶりだろう。
私が陰陽師になってからは、厳しく指導されていて笑いかけてくれることなんて、なかったのに。
何で、今……。
「つ、剣軌……」
「音宮の当主はおまえしかいない。……後は頼んだ」
「……嫌だぁぁっ!」
壊れそうなぐらい叫んで、拒否の意を唱えるが。
私の叫びもむなしく、ガシャンとガラスの割れる音が響いた。
「ああぁぁっ!」
同時に、血飛沫が舞う。ジュッと肌を焼く音もした。
剣軌の手にある試験管が二本いっぺんに、握力で握り潰され、手元から破片がカラカラと落ちていく音がする。
「あ……ああっ」
剣軌の右腕全体から顔にまで付着した血飛沫から、黒い蒸気が徐々に立ち上るのを目にして、愕然とさせられる。
冥王の血液を浴びてしまった。阻止しなければならないことが、起きてしまったのだ。
血飛沫が当たって焼けた箇所から、黒い鱗のようなものが浸潤するように広がっていく。
まるで、剣軌の身体カタチを呑み込むように。