俺のボディガードは陰陽師。〜第六幕・相の証明〜
何だ、何だ。今、ここに何しに来たんだ。
文句のひとつでも言いに来たか?
それとも死んでざまみろと?
……だが、そのどちらでもなかった。
《……君に、もう一度問う》
眼鏡の奥の不敵な瞳が光る。
《正義とは、何か?……わかったのだろうか?》
未だ繰り返される質問に、一瞬呆気に取られるが、少し考えたのち、思わず鼻で笑ってしまった。
『正義』とは、護る、その為の思想。人間の数だけそれぞれ違う。
……俺もまた、俺の『正義』があった。
あんたにもあんたの『正義』があって、俺の身代わりとなった母さんにも母さんなりの、親父らにも親父らなりの『正義』があったのだろう。
決して、善悪の物差しではない。それだけはわかった。
でも、本当にそれだけだ。
すると、彼が笑ったような気がした。
《だから、人は正しくなれない生き物なんだよ。……誰もがね》
その時、ハッと気付かされた。
俺たちは特別『弱者』でもなかったことを。
俺たちは、何一つも奪われていなかったことを。
奪われていたと思い込んでいただけで、実はすぐ傍にあったのだ。