俺のボディガードは陰陽師。〜第六幕・相の証明〜
菩提さんの涙はもう既に乾いていた。
目も赤くしておらず、至って通常通りの涼しげな空気を醸し出す菩提さんだ。
笑顔の仮面もいつも通りで、やはりピンと背筋が伸びてしまう。
「は、はい……」
菩提さんが何の話をしてくるのかと、構えていたが。
やはり、予想通りの内容を率直に問われた。
「伶士くんは、ひょっとして……【夢殿】の夢見をしたの?」
……この文章には、いくつもの質問が詰め込まれているよう。
夢殿の力が覚醒しているのか?【夢殿】の夢見……即ち、未来の選択をしたのか。という。
もう、下手に隠す事は出来ない。
「……はい。差し出がましい真似だったかもしれませんが……」
すると、菩提さんは「ははっ」と笑う。
それは、いつもの乾いた笑いではなく。
「……そうか、そうだったんだ。それは、嬉しい選択だったよ」
「え?だ、だって復讐を邪魔されたとか……思ってませんか?まさか」
そんな俺の問いに、菩提さんは笑みを浮かべて首を横に張る。
その笑顔は……仮面の笑顔ではない。ピンと張り詰めていたものが解けているような、そんな笑顔だった。