俺のボディガードは陰陽師。〜第六幕・相の証明〜
「院長先生が?何かな」
「最後の挨拶じゃね?」
「じゃ」と、俺に手を挙げて菩提さんは笑顔を残して去っていく。
そして、そこには俺となずなの二人きりとなった。
「……」
二人きり、となると意識してしまい、沈黙してしまう。
なずなに、どんな言葉を掛けてやればいいのか。考え込み過ぎて、何も言えなくなってしまうのだ。
そんなことで口を噤んでいたが、当のなずなは俺どころではなかった。
「親父……」
その視線の先は、既に命の灯が消えていて、顔に白い布をかけて横たわるおじさんだった。
体は温度を失って、ぴくりとも動かない様子をただ見つめているのだ。
しばらく見つめていて……息をふぅと吐いた。
「……ずっと親父の傍にいてくれたの?」
おじさんから目を離さないまま、俺にそっと尋ねてくる。
「え……」
「私達が書類手続きや電話連絡でバタバタしてたから。親父をひとりぼっちにしないように、ずっとここにいてくれたんだろ」
「あ、まあ……」
何もすることが無くて、ただ立ち尽くしていただけだけど。
おじさんを一人残してここを離れてはいけないかな、と思ったのも確かだ。