俺のボディガードは陰陽師。〜第六幕・相の証明〜
「許されない……ですが。だからこそ、です。だからこそ我々は、殺さず」
一瞬だが、綾小路さんは目を伏せる。
しかし、次に顔を上げたその表情は、物騒なことを口にした割には、至って普段通りだった。
「『憎い』からといって、殺意だけを持ってしまえば、あちらさんもそういうスタンスでいるのに、それはただの殺し合い、生殺与奪の権利を争っているがだけ。……魔族と変わりがありませんし、悪循環ですよ」
「…それに俺たちは人間だし、彼らもまた人間だ。彼が得た魔力で人に手を掛けた件は、殺人罪の適用は難しく、どうにもならないけど、リグ・ヴェーダには『大石明生という人間』として犯した罪もまた沢山ある」
綾小路さんに続いて口を開き、話に割り込んできたのは、綾小路さんの部下である風祭さんだった。
「誘拐、監禁、傷害、窃盗、不法侵入……大石にはこの世界で裁かれる罪も沢山あるんだ。警察としては、そっちの罪を償わせたい。…大石によって奪われたのは、俺たちだけじゃないから」
……そうか。
黒い翼の彼によって、傷付けられたり奪われたのは、ここにいる人たちだけじゃないのか。