マリオネット★クライシス
「あらやだ、物騒ね」
口に出してはみたが、所詮他人事である。
すぐに興味を次の録画番組へと移し、居心地のいい椅子に再び腰を落ち着けた。
そこへ。
RRRR……
デスク上のスマホが鳴り出した。
着信音が事務所のスタッフに設定された音楽であったため、テレビに映し出された録画番組一覧から目を逸らすことなくスマホを取り上げ、赤い指先を滑らせる。
「はい、もしも――」
『社長っ!! 大変ですっ!!』
キィイイン、とハウリングが聞こえそうな声が鼓膜を直撃し、とっさにスマホを遠ざけた。
「何よ、どうかしたの?」
努めて平静に問いただすものの、相手の男は何やらわぁわぁと慌てふためいて単語を喚きちらすばかりで要領を得ない。
「どうしたの、落ち着きなさい。何を言ってるのかさっぱりわからないわ」
わからないが、何か起こったことは確からしい。
反対側の手に持っていたコーヒーカップをデスクへと置いた。
『いないんですっ! どこにも!!』
今にも泣き出しそうな、情けない声が再び響いた。