マリオネット★クライシス

――……さんて、もっとしっかりしてるのかと思ったけど、全然そんなことないね。
――そんなに可愛いかな？　ちょっとスタイルがいいってだけじゃん。
――撮影、見学させてくれないんだよ。邪魔になるからって。ひどいよね？　何様？
――あたしは推しのサイン断られたー。ケチくない？　ちょっと頼んでくれればいいだけなのにさ、ほんっと、気が利かないヤツ。
――もっと笑わせてくれる面白い子かと思ってた。ほら、ドラマだとそうじゃん？
――芸能人だっていうからどんなオーラ出てるのかと思ったけどさ、なんか、フツーすぎてがっかり！


ごく普通の私立高校だから、最初は興味津々なクラスメイトたちが群がってきて、動物園のパンダになったみたいな気がしたけど。
すぐみんな、飽きてしまった。
素のわたしが、特に特徴もない、つまらない女の子だから。

そう、自分でもわかってる。
女優じゃないわたしには、なんの価値もない――……



……チリン



「……ウ、ユウ？　どうした？」

肩を軽く叩かれて、ハッと現実に戻る。
「ううんっごめん、ちょっとぼんやりしちゃった」

「そう？　じゃ、行こうか」
特にツッコむこともなく微笑んだジェイは――するっとわたしの手を取った。

「えっと……ジェイ？」
「ん？」

戸惑うわたしをよそに、指先がきつく絡まっていく。
“恋人繋ぎ(これ)”は譲れないってことらしい。

振り解くべきか一瞬迷ってから……こんなところで恥ずかしがってたら、ロストバージンなんてできない、と強く自分に言い聞かせ、そのまま手を預けることにした。