マリオネット★クライシス

そうして園内を歩き始めたわたしたちは、何から乗ろうかって話になって。

「ユウはどんなのが好き? 絶叫マシン、って言うんだっけ。ジェットコースターは平気?」
「うん、大丈夫――」

そこでハタと気が付いた。
わたし、自分から誘ったくせに、どんなアトラクションがあるのかとか見どころとか全然知らないや。

せめてさっき、彼を待ってる間にスマホでチェックしとくんだった。
まずい、失敗した!

「ご、ごめん! ちょっと待って。オススメとか、まだ何も調べてなくて……」

こういうところが、気が利かないって言われる理由なのかも。

「えっと、スマホ……」
急いでカバンに手を突っ込み、ゴソゴソ。

でも、「おっと、ストップ。電源切っただろ?」っていう冷静な声で、ピタッとその手を止めた。
そうだった、わざわざ自分で切ったんだった。

「じゃあ……園内の地図とかガイドとか」
チケット売り場に置いてあるかな。

「ちょっと待ってて、わたし取って――」
「別に、何もなくていい」

「え? で、でもっ……」
行き当たりばったりじゃ、数時間とはいえ退屈させちゃうかも。
せっかく貴重な時間を割いてくれてるのに、申し訳ないよ。

オロオロと反論しかけた言葉を遮るように、繋いでいない方の彼の指が軽くわたしの唇に触れた。

「今日は目についたアトラクション、片っ端から乗っていくのはどう? 気に入ったら、同じヤツ何回でも。ワンデーパスだから、乗り放題だし」

< 103 / 386 >

この作品をシェア

pagetop