マリオネット★クライシス
その後、メリーゴーランドをまったり堪能して、心拍数もいくらか収まった矢先の事。
「ユウ、アメリカに来ない?」
ゲートから一緒に歩き出したところで藪から棒に言われ、「へ?」ってきょとんとしちゃった。
「日本はこれから夏休みだろ? 遊びに来れば? オレ、今一人暮らししてるから、いくらでも泊ってくれていいし」
ひ、一人暮らし? 泊るっ!?
嬉々として矢継ぎ早に提案してくるジェイに、こっちは軽くパニックだ。
「や、それはそのっ」
「海外に行ってみたいって、さっき言ってただろう?」
「そりゃ言ったけど……」
「なんなら、そのまま留学しちゃえば? 手続きとか手伝うよ」
「りゅ、留学っ!?」
前のめりで言われてしまい、「ちょ、ちょっと待って!」って両手を慌てて振る。
焦って二度見したけど、その表情は冗談って雰囲気じゃなかった。
本当に、真面目に言ってる、らしい。
「ユウって高校3年だったよな。もう進路は決まってる?」
「決まって……る、っていうか。女優に専念するつもりだけど」
大学には行かないつもりだと告げると、目の前の顔がパッと輝いた。
「時間があるなら、留学してもいいだろ? きっと得られるものは多いし、女優の仕事だってたった数年休むくらいどうってことないよ」
どうってことない?
一瞬にして、頭のどこかがスッと冷えていくのがわかった。